進歩、発展、前進は当たり前。停滞、後退などはもってのほか。そう、我々は思い込んでいるのではないか。滞ること、退くことに価値を見出そうとはあまりしない。
ところが、工学博士で仏教にも造詣深い森先生は指摘する。「退歩なくして真の進歩はあり得ない」。「退歩」とは禅籍に出てくる言葉で「一度立ち止まる」こと、または「一歩、退(ひ)てみること」を意味する。立ち止まり、一歩退いてものごとを捉え直すと、失敗と決めつけていたことのなかに、かけがえのない宝が隠れていたりする。押してばかりではなく、引くことも必要だったと気づく。負の結果も成功の糧に転じたりもする。
前進することだけでなく、「退歩」も忘れるな。退歩とは、逃げることや引きさがることでは決してない。