ブックレビュー

【書評】いのちの最後の授業 著:カンポン・トーンブンヌム

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これはタイの在家仏教修行者カンポン・トーンブンヌムさんの追悼本です。しかし、この読後の軽やかさは一体なんなのでしょう。

この本は三部構成となっています。一部は「気づきの瞑想」をへて手に入れたしあわせになるためのメッセージ。 二部は法話(講演録)、そして三部は、カンポンさんの善友によるメッセージとなっています。

一部目、カンポンさんが、「気づきの瞑想」で手に入れた洞察が、短い偈文のように訳出されています。その言葉を、自分の日常の時間感覚で読もうとすると意味が頭に入ってこないことに最初とまどいました。

読書好きの方は、本の中に日常と異なる時間が流れていることを何度か経験されたことがあると思います。

この本は、カンポンさんの時間。それを日本語に丁寧に訳出した訳者 浦崎さんの言葉のリズム(時間)に自分を合わせることにより広がる世界が描かれています。それが、「気づきの瞑想」で手に入れられる世界なのかもしれません。

著者は、24歳のときに、体育教師として水泳の模範演技中に事故に遭い首の骨を骨折し全身麻痺になりました。失意のまま16年を寝たきりで過ごし、40歳にして生涯の師と言うべき仏教僧ルアンポー・カムキアン師に出会い、瞑想法を習得。

その後、「気づきの瞑想」で手に入れた洞察を講演やラジオ番組などを通じてタイをはじめ日本の多くの人に影響を与えました。2016年4月に満60歳で逝去。この本は、カンポンさんが「法(タンマ)を伝える道具」として生きる決意をした44歳以降に焦点をあてた内容となっています。

これはカンポンさんの追悼本ではありません。本を開く全ての人にとってカンポンさんが、「今、ここ」で善友として「いのちの最後の授業」を続けてくれるのです。

それが、読後感が軽やかの秘密なのではないでしょうか?

 

〈書籍情報〉
いのちの最後の授業
著者:カンポン・トーンブンヌム
訳:浦崎雅代
出版社:サンガ
定価:本体1500円+税
発行日:2018年6月22日発行
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