アルボムッレ・スマナサーラ長老インタビュー

ストレスを生み出す「貪瞋痴」 その3

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――今日は、いじめ問題に関し、自然淘汰という観点からも興味深いお話をいただきました。最後に長老から、いじめに関してさらなるご提案をいただきたいと思います。

いじめと言えば、他にも根本的に考え直すべきことがあります。

試験ってなんですかね。弱い者を切り捨てることでしょ。面接ってなんでしょうかね。人間だれにだって仕事をする権利があるでしょうに。面接をして、試験を受けなくちゃいけない。そして捨てられますね。それらを消す事ができますか、この世の中から。教育の基本は、誰でも知識を得る権利がある、という理念に基づくことでしょう。どういうことですか。その教育現場がいじめシステムで成り立っているというのは。

採点制度があって「何点取ったの?」って、あれっていじめじゃないですか。理解能力を身に着けて、物事をしっかり理解する能力を向上させるべきはずの教育が、「何点取ったの?」。教育が教育でなくなっているのです。

丸暗記した知識だけを頭に詰め込んで、既成のいじめの試験システムの中で、選択肢の中からどれか答えを選び出させて、それで点数を取る。そんなことは練習すればだれでもできるんです、結局は。

それに対して、義務教育を終えただけの人でも、世界で立派に通用し成功している人はいっぱいいます。立派な人生を送って、それこそよほど真っ当な人間になっている。その人たちには知恵があるのです。でも角度を変えてみれば、既成のいじめシステムの中では、いじめられて追い出された人たちかもしれません。

今日見てきたように、現代社会は政治システムであろうが、刑法システムであろうが、どこもこのいじめシステムで動いているのです。これを自覚している人は少ないですが恐ろしいことです。この世の成り立ちは、思っているほど単純ではありません。

ですから、そこで一番大切になってくることは、まずこの事実に気づくこと。そして今日お話ししたように、断固とした態度で人権を守ること。それに尽きるのです。

――ありがとうございました。

 

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税
発行日:2003年10月
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一悟
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税
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原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2009年6月
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