とはいえ、同制度を導入して以来、1500人ほどのラッシュジャパンの社員のうち、制度を利用したのは実のところこれまでにわずか1組に過ぎないと安田さん。
だが、一向に意に介してはいない様子だ。
「〝制度としてワークしていないのでは?〟と思われるかもしれませんね。
ですがこれがあるがゆえに、LGBTの人は安心していられるし、そうでない人に対しても、われわれラッシュはLGBTにポジティブな考えを持っているというメッセージになります。制度とは使われることがすべてでなく、むしろ存在することが大切なのだと思います。制度とは、会社からのメッセージであるからです」
この2015年は同社にとってジェンダー・イヤーとも言えそうなほど、矢継ぎ早な施策を行っている。
すべての募集ポジションにおいて、リクルーティング時のエントリーページから性別を記載する欄を一掃。その上で、年齢、国籍、人種、障がいの有無、宗教とともに、性的指向や性的自認等で差別をしない採用活動をするとの宣言を行ったのだ。
エントリーページから性別欄をなくした
こうした性的マイノリティに対する支援がおおやけになるやいなや、採用の面でポジティブな動きが見られたと言う。
報道機関がこうした人事改革を取り上げたことでメールや電話による問い合わせが増え、さらにはLGBT当時者からのアプローチが増えた。ラッシュで働く性的マイノリティの数は、間違いなく増えているはずだと安田さんは断言する。
少子化が言われるなか、採用活動は今後ますます難しくなっていくに違いない。
そうした現実のなか、人材の能力や可能性をジェンダーや性的指向といった本人のごく一部を占めるにすぎない理由から切り捨てることは、合理性に欠けることとなる。
LGBTを始め、外国人や障がい者などなど、ありのままを認めてともに「自分らしく働く」体制を作ることは、実は企業の可能性を広げ、足腰を強くすることにほかならないのだ。