対談

次の一歩を踏み出すために 
元結不動密蔵院住職・名取芳彦 
NHK大相撲解説者・舞の海秀平

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 失敗は誰にでもあること――。しかし、次の一歩を踏み出すためには、その失敗を正面から受け止めることが何より重要だ。かたや、仏教のエッセンスを分かりやすく語り、多くの支持を得ている名取芳彦師。こなた、「平成の牛若丸」「技のデパート」の愛称で親しまれてきた元大相撲力士・舞の海秀平氏。道を究めた二人が、失敗と対峙するための心構えを、元結不動密蔵院を土俵に語り合う。

特別対談 次の一歩を踏み出すために

原因があって、結果があるということ

名取お会いできるのを楽しみにしていました。現役時代の舞の海さんは、体格的に恵まれず、また、たいへんなけがも経験されていて、「困難」に立ち向かい続ける力士生活だったと、いちファンとしては思っています。お相撲さんにとって「失敗」といえば、やはり黒星でしょうか。

舞の海そうですね。もちろん、単に「負け」で済まさず、取組後にビデオを見て、敗因をきちんと探ります。そこで注意しなければならないのが、負けた瞬間だけではなくて、その一つ、二つ前の体の動きがどうであったかを振り返らないと、敗因はなかなか見つけられないということです。押すべきではないところで相手を押して、その勢いを上手く利用されて投げられてしまったとか、負けにつながるもともとの原因があるんですね。

名取それを仏教では「因縁」といいます。「縁」がより合わさって結果が生じたのだと、とらえるわけです。でも、いざ取組が始まってしまえば、考えながら相撲を取る余裕などないのでしょうね。

舞の海ええ。体が勝手に動いていなければなりません。

名取それって、長年続けていると自然と口から出てくる読経と同じです。何も考えないで唱えるっていうんじゃ、ほんとうはいけないのでしょうが(笑)。でも理屈ばかりではなくて、ただひたすらに唱えているだけで、普段は気が付かないようなことに思いを巡らせたり、発想が生まれたりすることがあるんですね。それが読経の大きな効能の一つといわれています。

舞の海相撲でも、日々、稽古を重ねていくことによって、本番の取組でイメージどおりに動くことができる。頭で考えて理論立てたことを体に染み込ませるために、欠かすことのできないのが稽古だと思っています。

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