宗教学者 島田裕巳の“怒りの研究”

ローマ帝国の頭脳・セネカ、彼の怒りの考察とは

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権力者と“怒り”の関係

確かにこれらは、怒りというよりも、狂気といったほうがいいものばかりです。しかし、セネカの挙げている怒りは、ほとんどがこうした性格をもつものなのです。それは、この紀元前後の人間たちがまだ野蛮であった証拠ともいえます。あるいは、キリスト教徒の人なら、イエスの説いた愛の教えが、まだ行き渡っていなかったからだと考えるかもしれません。

一つ重要なことは、セネカが例に挙げる人物たちが、権力者であったという点ではないでしょうか。しかも、当時の権力者は、武力によって権力の座にのし上がり、その地位を守るためにも、絶えず武力を用いなければならなかったということです。
そこに、激しい怒りの生まれる原因があったのではないでしょうか。

島田裕巳氏
宗教学者
島田裕巳(しまだ ひろみ)
1953年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。新宗教、仏教、神道、冠婚葬祭に加え、死との向き合い方、生き方など、宗教学の視点から幅広いテーマで研究・執筆活動を展開する。著書に『葬式は、要らない』『神道はなぜ教えがないのか』『島田裕巳の日本仏教史 裏のウラ』など多数。近著に『日本の新宗教』『人は、老いない』がある。
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