対談

答えが一つでないから仏教はおもしろい 国際日本文化研究センター教授・末木文美士×尼僧・勝本華蓮

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自分なりに、楽しめればよい

勝本インドの古い経典を見ましたら、お釈迦さまは説法して歩かれ、出会う相手によってふさわしいお話をされた。勉強をしている人には学術的な話を、一般の方にはわかりやすい話を。それはお話を受ける側が、いちばん求めている姿ではないかと思ったんです。
末木ぼくは、少し冷めていて、お釈迦さまのすべてを信じちゃダメだぞ、と思っています。仏教は信心から始まるのではなくて、疑いから始まってもいいんじゃないかと。ぼくは念仏から勉強し始め、壁があって、坐禅にいったのですが、それは信じなくても座っていればいいよ、というのが入りやすかったからなんです。南禅寺系の師匠について三十年以上ですけど、自称「なまくら禅」です。それでも、文献を読んでいて、ああそうかと思うこともあるので、体で身につけることは基本的に大事ですよね。勝本さん、ご修行は?
勝本比叡山で二か月。でも、それは、お坊さんとしての作法を身につけるものであって、自分を高めるためとか悟るということではありません。果たして、何が修行なのかなと思いますね。
末木一人で書物を読んだり、お経のあげ方を勉強するのもいいでしょう。ただ自己流でやっていると頭打ちというか、自分の予想したところまでで終わってしまう。スポーツでもいいコーチにつくと自分が思う以上の能力が出てくるように、仏教も伝統的なやり方に従うと、自分の殻が破れることがあると思います。勝本さんは、よく思い切って、出家に踏み込みましたね。
勝本宗教は文献学だけでは説明がつかない、不可思議なところもありますよね。だから、得度して、修行してみたいと思ったんです。でも、実際にお寺で法要のお手伝いとかをさせてもらうと、いい悪いじゃなく、求めていたものと違うと思いました。私は勉強したかったので、迷いつつ、軌道修正しつつ、今にいたります。
末木勝本さんは格好はお坊さんですけど、お坊さんの世界どっぷり感が全然ないですね。
勝本私は髪を剃り、服装も定番の法衣か作務衣です。きれいになることやブランド品を身につけることに価値をおいていないので、とても楽です。ただ、それが万人に楽しいかはわかりません。
末木そうですね。バッグを選ぶ楽しみも、美容院に行く楽しみもなくなる。何が楽しくて生きているの?と思いますよね。ぼくの家にはテレビがないのですが、母親は「テレビがなくて、何がおもしろいの?」って言いますよ。

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