日本伝統仏教者のためのマインドフルリトリート

【基調講演1】「プラムヴィレッジにおける戒律、サンガ、 マインドフルネス・トレーニングの関係について」 その2

チャン・ファプ・フイ師
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私たちを守る「戒」

「戒」と「サンガ」と「マインドフルネス・トレーニング」、この三つというのは、このようにして密接に結びついています。

ですからまた、「戒」とは私たちの生命力、とも言えるでしょう。もしもこの生命力である「戒」というものが実践されず、私たちの生活において本当に現実化しなければ、ブッダの教えを未来に託することはできません。だからこそ、ブッダは私たちに「戒」を守り、そしてそれを維持していかなければならないと教えられたのです。

そしてブッダは「戒」が、本当にしっかり守られるのであれば、ブッダの教えが、未来永劫ずっと守られ、続いて行くのだとおっしゃったのです。ですから、ブッダの教えを継続していくためには、ブッダの教えを共に実践するサンガというものが、きちんと機能していく必要があります。

2015年、タイと一緒に、私も日本に招かれていました。しかしタイが倒れられたので、付き人の私も日本に来ることができませんでした。今年は、こうしてやって来られて本当に幸せです。私たちを助けてくださる日本の在家サンガの仲間、たくさんの菩薩たちがいます。彼らの働きによって、こうして日本にブッダの教え、そしてタイの教えを運んでくることが可能となりました。

特に4泊5日の富士山リトリートでは、彼らが本当に心を込めてちゃんと実践を行っている様子がよくわかりました。「五つのマインドフルネス・トレーニング」の実践を、本当に自分自身のため、そして自分の家族のため、幸せをもたらしてくれるようにと、彼等は真摯しんしに取り組んでいたのです。

もし、この「五つのマインドフルネス・トレーニング」を毎日実践するならば、どんどん境地は深まって行きます。それは私たち出家にとっても同じです。この「トレーニング」を、それこそ「マインドフル」に行うことができれば、私たちの誓い、願いというものを、しっかり持続していく実践が可能になります。

曹洞宗大本山 總持寺大祖堂で記念撮影をするプラムヴィレッジ僧侶団と
「日本伝統仏教者のためのマインドフルリトリート」参加者の日本伝統仏教の僧侶の方々

人間には誰しも、サポートというものが必要です。私たちには、サンガがあります。もし病気になった時には、私たちの仲間である兄弟姉妹が、私たちのために食事を用意してくれます。そして、クスリを見つけてくれたり、医者を呼んでくれます。

またとても寂しかったり、そういう時には、多くのブラザー&シスターがやって来て支えてくれます。でも、例えば一人で街の中に住んでいたり、孤立していれば、誰からの助けも受けづらいでしょう。ですから、プラムヴィレッジの伝統では、サンガの発足には、少なくとも20人の出家が必要だというふうになっています。

タイランドの僧院では、200人以上の出家が住んでいます。そのうち男性僧侶も100人以上います。アメリカでもオーストラリアでもドイツでも、いろいろな所に僧院がございます。

それから、世界各地のいろいろな地方に、さらに「十四のマインドフルネス・トレーニング」を受けた人たち(プラムヴィレッジの正会員)が在家のコミュニティーを作って、さまざまな深い実践を修しています。ですから、それらのサンガのおかげでいろんな人が集まって、一緒に実践ができるのです。出家であれ、在家であれ、私たちは一緒にコミュニティー、サンガという集まりの中で実践を深めていくことが可能なのです。

タイ(先生)であるティク・ナット・ハン師の元、プラムヴィレッジには30年以上の伝統があります。そしてその中で、私たち僧侶は、タイが教えられた通り、友愛を育むように世界各国のプラムヴィレッジ僧院を定期的に回っていきます。一カ所にずっと留まり続けることはいたしません。私たちは、それぞれまったく異なったバックグラウンドから出てきた者たちですけれど、常に私たちは友愛を育むというプロセスの中にあります。そしていろいろな場所から来ておりますので、それぞれの文化、違った文化や伝統からお互い学び合っています。

以上のような理解に基づいて、私たちは本当に「戒」への強い信頼を守っていこうという誓願を立てることができます。そして人生の中で、あらゆる瞬間においてマインドフルネスの光を灯すという事が、可能になっていくのです。

まずは、入る息、出て行く息に意識向けること。それにより、本来のマインドフルネス、本当の意味でのマインドフルネスの光を灯すことができます。このマインドフルネス()を実践すればするほど、集中の力()も深まっていきます。そして出家の一つの目標、目的というのは、深い洞察、智慧()を得ることです。そのことによって、その洞察で、どのような限界も超えていくことができます。

在家の人たちにとっても同じです。マインドフルネスの実践によって、そこから洞察が生まれ、そして理解が生まれます。そのような洞察があれば、人生でたとえどのようなたいへんな事が起こっても、それを乗り越えていくことが出来るのです。

2019年のお正月、ベトナムの総本山 慈孝寺でタイ(ティク・ナット・ハン師:右から三人目)とお茶を飲むお弟子さんたち。ブラザー・サンライト(一番左)さんが基調講演の日本語版作成の協力をしてくださいました。

(基調講演1 了)

チャン・ファプ・フイ(真法暉)
ティク・ナット・ハン師の弟子の一人。チャン・ファプ・フイ(真法暉)師は、ベトナム系アメリカ人のプラムヴィレッジのダルマティーチャーです。2001年2月12日にプラムヴィレッジ・フランスで25歳で僧侶として出家。2004年2月9日に具足戒を受け、2008年、ティク・ナット・ハン禅師より法灯を継承。現在、アメリカ・ミシシッピ州にあるプラムヴィレッジのマグノリア林僧院の僧院長を勤める。目下は、ベトナムの総本山・慈孝寺に移られたティク・ナット・ハン師の付き人を務めている。
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