弊社より青山俊董師の『禅のおしえ12か月 つれづれ仏教歳時記』が発刊されました。
それを記念して、一部、抜粋を紹介させていただきます。
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「われわれは時間とか人生というものを、過去・現在・未来と、とかく直線的に考えがちですが、円環的に考えてはどうかな」
これは余語翠巌老師がおりおりに語られたお言葉である。老師に円相と、賛として「無始無終圓同大虚」──無始無終、圓なること大虚に同じ──と書いて頂き大切にしている。
書いた円相には始めと終わりがあるが、円そのものには始めも終わりもない。ということは云いかえれば、どの一点をおさえても終着点であると同時に出発点でもあるということにもなる。今日只今の私の姿は、これまでの何十年かの人生をどう生きてきたか、その生き方の総決算の姿であると同時に、これからの人生の出発点でもある、というのである。その今をどう生きるかで、過去を生かすこともでき、また殺してしまうことにもなる。同時に、未来を開くも閉じるも、今日只今の生き方にかかるというのである。
この円環的思惟法から、もう一つ学んでおきたいことがある。それは〝いつ死んでもよい〟という姿勢で今日只今に立ち向かうということと、いつでも出発点に立つという垢づかない初々しい心での立ちあがりを、ということである。年の暮れや正月ばかりではなく時々刻々に、しかも卒業なしの姿勢で。
青山俊董
1933年、愛知県生まれ。5歳の頃、長野県の曹洞宗無量寺に入門。15歳で得度し愛知専門尼僧堂で修行。駒沢大学仏教学部、同大学院を卒業。曹洞宗教化研修所を経て64年より愛知専門尼僧堂に勤務。76年、堂長に。2004年、仏教伝道功労賞受賞。09年、曹洞宗の僧階「大教師」に尼僧として初めて就任。著書に『道はるかなりとも』(佼成出版社)『あなたに贈る人生の道しるべ』『今ここをおいてどこへ行こうとするのか』(共に春秋社)他多数。