つれづれ仏教歳時記

がんばらず和してゆこう

青山俊董
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弊社より青山俊董師の『禅のおしえ12か月 つれづれ仏教歳時記』が発刊されました。
それを記念して、一部、抜粋を紹介させていただきます。

画像・AdobeStock

一枝[いっし]の梅花 雪に和して[かんば]

早春に咲く花に香りの高いものが多い。厳しい寒さに堪えてきたからであろう。古来より人々の愛してきた言葉に「一枝梅花和雪香」──一枝の梅花、雪に和して香し──とか、「梅経寒苦発清香」──梅は寒苦を経て清香を発す──などがある。

和紙の話を聞いた。原料になる[こうぞ]三椏[みつまたい]も、なるべく寒い地方で育ったもののほうが弾力があってよく、また紙[]きも、厳寒に雪ざらしとか、[]てつくような冷たい水で漉くほどに上質の和紙ができるという。温暖な気候の中で育った材料であったり、またあまり冷たくない水で漉くと紙がボケてしまって、決して良質の和紙にはならないという。

柳宗悦[やなぎむねよし]さんの言葉に「[ふき]のとうほほえむ、雪をかざして」というのがある。不幸が続く知人を励ます思いで「蕗のとうほほえむ、雪にもめげで」と書き送り、後に「雪をかざして」と改められたという。「めげで」と肩に力を入れず、〝雪のお蔭で甘くやわらかく香りも高くなることができた〟と、雪をかざしとして和してゆくという生き方ができると、疲れもしないし、傍目にもたのしい。

人生の旅の途上で出会うすべてのことに対しても、そんな生き方がしたいものである。

 

青山俊董
1933年、愛知県生まれ。5歳の頃、長野県の曹洞宗無量寺に入門。15歳で得度し愛知専門尼僧堂で修行。駒沢大学仏教学部、同大学院を卒業。曹洞宗教化研修所を経て64年より愛知専門尼僧堂に勤務。76年、堂長に。2004年、仏教伝道功労賞受賞。09年、曹洞宗の僧階「大教師」に尼僧として初めて就任。著書に『道はるかなりとも』(佼成出版社)『あなたに贈る人生の道しるべ』『今ここをおいてどこへ行こうとするのか』(共に春秋社)他多数。
禅のおしえ12か月 つれづれ仏教歳時記
著者:青山俊董
出版社:佼成出版社
定価:本体1,500円+税
発行日:2018年12月
道はるかなりとも
著者:青山俊董
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:1998年11月
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