ブックレビュー

【書評】リーダーの禅語 著:枡野俊明

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良きリーダーは人の心を摑むことに長けている。良いところを褒め、悪いところを叱り、虚心坦懐、人に接するから信頼されるのだろう。

本書は禅語に基づくリーダー論である。例えば、本書で取り上げている禅語の一つに「対機説法」がある。これは、釈尊が人々に法を説くとき、それぞれの置かれた状況に合わせて法を説き分けることを意味している。企業に置き換えれば、さまざまな状況下で仕事をする部下たちに対し、一人一人にふさわしい助言や指導をすることであろう。このほかにも、即断即決を説く「無常迅速」や行動の結果はすべて自分に返ってくるから、身業(立ち居振る舞い)・口業(言葉)・意業(心)の三業を整えるべきだと教える「因果応報」など、50の言葉が綴られている。

このように釈尊の言葉やその生き方は、リーダーというよりも、すべての人のあるべき姿を示している。すべての人にあてはまる真理だからこそ、仏教や禅を学んだ稲盛和夫やスティーブ・ジョブズなどは大企業のトップに立ち、社員の心を摑んで、業績も伸ばせたのではないだろうか。

枡野さんはリーダーに必要な条件に、風格、育成力、平常心、行動力、信頼力の5つの力が必要だと説くが、「そんなにたくさん身につけなければならないのか」と落胆することはない。一つをしっかりと身につければ、すべてに通ずるからである。

説かれる50の禅語の中に、良きリーダーへの入り口となる言葉を見つけてみてはどうだろうか。「因果応報」、取り組めば必ず変化が現れる、とは釈尊の確信である。

 

〈書籍情報〉
リーダーの禅語
著者:枡野俊明
出版社:三笠書房
定価:本体1400円+税
発行日:2017年3月15日発行
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