ブックレビュー

【書評】超訳こころの禅語 悩みを解決する智慧の言葉50選 著:村越英裕

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悩みが尽きないのが人生である。では、なぜ人は悩むのだろうか。本書では、悩みが生まれる原因と、直面した悩みにどのような心で向き合えばいいのかを、臨済宗龍雲寺住職の村越英裕さんが厳選した50の禅語で説き示す。人生の生きがいから、仕事・恋愛における対人関係、あるいは子育てに至るまで、扱われているテーマは幅広い。

例えば、生老病死の四苦と、愛別離苦(愛する者との別れ)・怨憎会苦(怨み憎んでいる人と会わなければならない苦)・求不得苦(求めるものが得られない苦)・五蘊盛苦(生きている限りやってくる苦)の四苦を説く「四苦八苦」。生きる上で避けらない苦があると知ることで、自分がなぜ苦しんでいるのかを見つめる機会にもつながる。

このような禅語を紹介しながら、村越さんは、「止まる」「捨てる」「シンプルにする」「見方を変える」「徹する」の5段階の心のプログラムが、問題に向き合う上で大切であると説く。

「止まる」とは、立ち止まること。日々悩みに直面する私たちは、ともすると“立ち止まってはいけない”と考え、右往左往してしまう。禅では、問題を客観的に捉えるために、一度立ち止まることを薦める。

立ち止まって問題を冷静に捉え直すと、“自分にできること”と“自分にはどうすることもできないこと”が見えてくる。自分に対処できないことは、「放下着」(すべての執着を捨てきること)の心で捨ててしまいなさいと説く。すると、問題をシンプルにしたことで物事への見方が変わり、やがて自分が抱えている問題の根本的な原因が見えてくる。あとは、その原因を取り除くために、なすべきことに「徹する」だけだという。

もちろん、自分の心を見つめる過程にも苦は伴う。それでも、禅語によって自分の心を見つめる訓練を繰り返せば、人生で直面するあらゆる問題に対して、心は自在でいることができるのだそうだ。

不安を安心に変え、絶望を希望に変える心をもつ――本書はその手助けをしてくれる一冊である。

〈書籍情報〉
超訳こころの禅語 悩みを解決する智慧の言葉50選
著者:村越英裕
出版社:佼成出版社
定価:本体1500円+税
発行日:2018年11月15日発行
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