中村天風は1876年生まれ。日露戦争では参謀本部諜報部員として満州はハルビンに潜入、大きな成果を上げるも、戦後、30歳で当時死病とされた肺結核を罹患、余命6ヶ月の宣告を受ける。
のち、インドのヨーガ行者カリアッパ師との運命的な邂逅を得て、奇跡的に一命を取り留め瞑想に開眼する。天風35歳のときであった。
天風によれば、心の奥には大きな「生命力」が存在するという。それを潜在意識の奥から汲みだすのが天風の瞑想法の目的である。
天風の瞑想法で得られる境地はと言えば、「深い静寂」ということになろう。そして、この最高の瞑想体験を得るために「天風メソッド(心の集中方法)」が用意されている。それは「音」あるいは視覚的な「一点」に集中し、そのあとに訪れるシーンとした静けさ〈一瞬の空〉を体得するのだ。つまり、“集中”⇒“瞑想”を繰り返し、無心の境地に深く深く分け入っていくことになる。
本書の構成は、効用から入り、天風式瞑想法の特殊性を説き、方法論を開示するという3章立て。そして最後に瞑想の「秘伝書」というべき、天風の著作の現代語訳を付すというわかりやすい構成が、深遠な瞑想世界への理解の助けとなる好著である。
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