インタビュー

前野隆司さんインタビュー① 心のあり方の最高峰は「幸せ」

聞き手=千羽ひとみ(フリーランスライター)
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ダーナネットで連載された記事が、
『幸せ企業のひみつ~〝社員ファースト〟を実現した7社のストーリー~』
と題して書籍化されました。
同書の編著者である前野隆司さん(慶應義塾大学大学院教授)に、
幸福学を研究するようになった理由、
幸せ企業はどう作られるかなどを聞きました。

ヒューマンインターフェイス研究から幸福学へ

前野隆司・慶應義塾大学大学院教授

──『幸せ企業のひみつ』が発売されました。同書は、7つの企業がどう『幸せ企業』になったかを、先生が提唱する「幸福学」をもとに解明するものですが、もともと先生は「ヒューマンマシンインターフェイス」の研究が専門だとか。これの内容と、先生が「幸福学」の研究を始められた理由について教えてください。

「ヒューマンマシンインターフェイス」とは、人間と機械がどう触れあうか。具体的にはスマホのかたちやタッチしたときの感覚など、人間が機械を使う際の使い心地やさわり心地、あるいはロボットが人間の前でどう振る舞うかなどを、研究テーマとするものです。

たとえば、触感がスベスベしていると触れた人は爽快感を感じるし、やわらかいと安心感を感じます。ですからスカッとさわやかに感じてほしい炭酸飲料は、ペットボトルの表面をスベスベしたものにしますし、ぬいぐるみには、やわらかなスポンジや毛糸が使われます。どう感じてほしいかに合わせて素材やかたちを工夫して産業界を支える、「縁の下の力持ち」的な分野といえますね。

もともと僕は大学で機械工学を学んでいて、卒業後は大手カメラメーカーの研究所に入社しました。ところが機械だけを作っていると、どうも人間味が感じられない。それでカメラの重心バランスとかグリップの使い心地など、人の感じ方という方面に興味が移っていったんです。その部分の研究が遅れていたというのも、理由の一つです。

最初はツルツルサラサラした感触が人にどう影響するかを研究していたんですが、続けていくうち、触り心地一つで高級感とか心地よさを感じさせる理由や、リピート買いがしたくなる気持ちを知りたいなど、心の動きの部分へと興味がシフトしていきました。

そしてたどり着いたのが、機械においては幸せな使い心地を感じさせるものこそが最高のものであり、さらに一歩踏み込んで確信したのが、「心のあり方の最高峰は幸せ」ということでした。それで幸せを総合的に研究してみようと思ったんです。

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