社員の幸せを第一とする〝ホワイト企業〟を取材した連載が、
『幸せ企業のひみつ~〝社員ファースト〟を実現した7社のストーリー~』
と題して書籍化されました。
同書の編著者である前野隆司さん(慶應義塾大学大学院教授)に、
『幸せ企業』を作るにはどうしたらよいかを聞きました。
幸せの4つの因子
前野隆司・慶應義塾大学大学院教授
──前回、真に強い企業とは『幸せ企業』だとお聞きしました。では、『幸せ企業』になるには、どうしたらいいでしょう?
本書にも書きましたが、「幸せ」を心的要因で分解すると、4つの大きな因子があることがわかっています。
「幸せ」の4つの因子 …前野教授が提唱している、幸せの4つの要因
1.「やってみよう!」因子 <自己実現と成長の因子>
2.「ありがとう!」因子 <つながりと感謝の因子>
3.「なんとかなる!」因子 <前向きと楽観の因子>
4.「ありのままに!」因子 <独立と自分らしさの因子>
この4つが満たされていると社員が感じている職場こそが、幸せな企業といえるのです。
それらを生み出す土台となるものは、〝信頼とワクワク〟です。
信頼は、コミュニケーションを深めることで作り出せます。コミュニケーションが不足すると、上司からの依頼は命令になり、残業はやらされ感一杯のものになりますから、上司同僚がみんな嫌な人になってしまう。嫌な人だらけの環境で、力が発揮できるわけがありません。
ですが「自分も含め、みんな欠点はあるけれど、いい人だ」という信頼関係があれば、職場に行くのが嫌でなくなります。毎日行くのが楽しくて、ワクワクイキイキと働くことができるようになるんです。ですからまずは、コミュニケーションを深めて信頼関係を構築することから始めるといいと思います。
コミュニケーションを深める具体的な手段としては、「挨拶」と「ありがとう」から始めるのがおすすめです。
子どもの躾で最初に親から言われるのが「おはよう(挨拶)」と「ありがとう」ですが、言われて嫌な気持ちになる人はいません。特に「ありがとう」はすぐに出来ますし、お金と違い、言い合うと増えるんです。「ありがとう!」「こちらこそ!」と、双方のハートに感謝の気持ちがシェアされて、感謝が感謝を生み出していきます。
そして「ありがとう」と言われたら、「いえいえ、私なんか」と言うよりも、「どういたしまして。こちらこそ」と応えたいですね。前者はあまりお勧めしません。過度の謙遜は、自己肯定感の不足につながるからです。
ちなみに『幸せ企業』では、ありがとうという言葉ほどよく聞かれる言葉はありません。
言い換えると、ありがとうのない幸せな会社はありえない。僕はこれまで一度も見たことがないですね。
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