インドは今、さまざまな産業が急成長し、巨大市場を持つビジネス大国として注目を浴びています。
私が日本で暮らし始めた頃、日本とインドの文化の違いにびっくりしましたが、逆にインドを知ってもらう上では、インドの歴史、文化だけでなく、宗教を理解することが大事だと思います。
日本では、宗教はあまり重要視されないようですが、インドでは生活に密接していて、何よりも宗教を優先しています。
そのインドの宗教事情についてお話しします。
インドでは、ヒンドゥー教徒が全体の8割を占めます。それ以外では、イスラーム教徒が1割強。残りの1割弱にキリスト教徒、シーク教徒、 仏教徒 、ジャイナ教徒がいます。仏教徒は、わずか1%にも満たないのです。
こう言いますと多くの人は、
「仏教はインドで生まれたんでしょう。お釈迦さまはインドの人ですよね。それなのに、どうしてそんなに仏教徒が少ないんですか?」
と、不思議に思われることでしょう。
たしかに仏教徒は少ないのです。それは仏教だけを信じる人が少ないからです。けれども、インドでは仏教はとても大切にされています。お釈迦さまは、とても尊敬されているのです。ほとんどのヒンドゥー教徒は、ほかの神さまと同じように、お釈迦さまを拝んでいます。
それは、インド人にとって、
──仏教はヒンドゥー教とは別のものではない──
からなのです。一緒なんです。そう言うと少し混乱されるかと思いますので、ヒンドゥー教について、お話ししましょう。
ヒンドゥー教は、多神教です。その数は、およそ3億といわれています。日本の八百万の神さまよりも、はるかに多いですね。
そのなかで、主な神さまは、ブラーフマ神とビシュヌ神とシヴァ神です。この神さまは、三つでありながら一つなのです。一つの神さまの、三つのあらわれなのです。
そのなかの一つ、ビシュヌ神は、この世界に、人々を救うために化身としてあらわれたと信じられています。
そして、これまでいろいろな化身があらわれました。そのなかのひとりがお釈迦さまだと信じられています。お釈迦さまは、ビシュヌ神の9番目の化身なのです。
仏教とは、ビシュヌ神の化身であるお釈迦さまが説いた教えです。たとえば日本では、日蓮聖人が説いた教えは、仏教の中の日蓮宗ですね。同じように、インドでは、仏教はヒンドゥー教の一つ。ヒンドゥー教と仏教とは別のものではない。
そのようにインド人は、とらえているのです。
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