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今回は、インド人の死の迎え方についてお話ししましょう。
かつて日本では、多くの人々が住み慣れた自宅で家族に看取られながら死を迎えていました。しかし、いまは病院で亡くなる方がほとんどです。延命治療を受けながら、病院で死を迎える方もいるのは、寂しいように思います。
インド人の理想は、聖地ベナレス(バラナシ)で死を迎えることです。
そこには、聖なるガンジス河が流れています。そのほとりで息を引きとり、遺体を焼いて、遺灰を河に流してもらうことが、最高の死の迎え方なのです。なぜなら、遺灰をガンジス河に流してもらったら、天国にいけると信じているからです。
人々は自分の死期を悟ると、周囲の人に最後のあいさつをして聖地ベナレスに向かって旅立ちます。その前に、家族に財産分けをしたり、お金の貸し借りなども清算しておきます。
ベナレスでは、死を迎えるためのアシュラム(宿坊)があります。そこは、宿代も食事代もいりません。それらは、お金持ちの人たちのお布施で成り立っているからです。ただ、遺体を焼いてもらう薪代だけは、各自、用意していきます。
アシュラムには体が衰弱していっても、お世話をするボランティアの人たちがいます。あるいは、一緒に付き添って宿泊しているなかに丈夫な人がいたら、その人の介護をします。
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