自分にとって、父親とはどんな存在だったのか。
各分野で活躍する男たちが語る、心に残る父の言葉。
「あんたが元気やったらそれでええ」
©村松真砂子
とにかく地味で影が薄かった父
家族に何かを教え諭したり、自分の趣味を押し付けて威厳を保とうとしたり……。昔は、そんな父親が目立ちましたが、うちはそういうオヤジじゃなかったですね。
とにかく地味で影が薄い。いまになってオカンは「仕事にかまけて、子育てにまったく協力してくれなかった」と嘆くけれど、僕はそれでよかったと思います。もっといえば、それこそがよかったと思っているんです。どうしても子どもに影響を与えるのは母親の方で、父親はそんなに印象に残らないくらいでちょうどいいんじゃないでしょうか。これは自分も父親になって思ったことなんですが。
オヤジは、いつも夕方6時30分には帰ってきて、マジメな毎日を送っていました。僕の前で、お酒を飲んで泥酔するといった失態を犯すようなこともありませんでした。いま思えば、そういう努力をしていたんだと思うのですが、わりとパーフェクトで隙のない人。そして、僕が「やりたいこと」に対しては何でも協力をしてくれました。
一人っ子ということもあり、とにかく甘やかされていましたからね。「こういう本が欲しい」とひそかに思っていると、それを察してどんな高価な本でも買ってきてくれる。欲しいものも、我慢したことがありません。「チキンラーメンが好き」と言えば、業務用のものを箱買いしてきたり(笑)。あまりの量の多さに、チキンラーメンが嫌いになっちゃう、なんてこともありました。
1 2
バックナンバー「 インタビュー」