インタビュー

人生で、困った人ほど落語でたくさん笑えます 落語作家 小佐田定雄

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日本文化に息づく人を喜ばせる心

―――日本の古典文化は若い人のみならず、海外でも注目を集めております

正月はテレビでも、落語に限らず、古典芸能を特集してくれるんですが、正月を過ぎると、あとは知らんふりなのが悲しいですね。まさに晴れ着の和服と一緒です。

お茶とかお花とか、「心から人を喜ばせる」という日本の文化を日本人が楽しみながら学ぶことは大切にしたいと思います。

いま、うちの娘はドイツに住んでいるんですが、先日、ドイツ人にお茶を点ててほしいと頼まれたと電話がありました。

「お父さん、お茶の点て方って知らんねんけど、どうしよう?」というので、「『知らん』て言うたらええやんか」と答えると、「いや、知らんていうたら、『日本人は奥ゆかしい。さすがはお茶の心』なんて言われて……」と、結局断れなくなったというので、五千円くらいの簡単な茶道具のセットを送ってやりました。

落語に、茶道を知らない旦那が適当な作法でお茶を点てる『茶の湯』という話がありますが、いま、ドイツでうちの娘が家元になって、どんな恐ろしい茶の湯が起こっているのかと心配していたら、ドイツの人は、娘のお茶を美味しいと喜んでくれているとのことでした。

お茶の家元さんが聞いたら激怒する話やないかと、知り合いのお茶のお師匠さんに聞いたら、

「飲んでいる人が美味しいと思ったら、そのお茶の出し方が一番いい」

と言われて、ホッと胸をなで下ろしています。要は、相手に喜んでもらいたいという真心なんでしょうね。

落語って、約三百年かけて、たくさんの人の手が加わって作られてきました。それは、人間の起す失敗とか、幸せのパターンをさまざまに織り込んで、たくさんの人の笑いと、涙が積み重なってできあがった人生の智慧の宝庫なんですね。ぼくの作品もいろんな落語家さんのアレンジが加わって、いずれジャズのような落語のスタンダードになっていくのかもしれません。

 

落語作家
小佐田定雄(おさだ さだお)

1952年、大阪府生まれ。中学生の頃から落語に興味を持ち、ラジオ番組へ投稿を始める。74年、関西学院大学法学部卒。77年、サラリーマンを経て、故・桂枝雀に新作落語『幽霊の辻』を書いたのを手始めに、新作、復活、改作を行う。これまでに書いた作品は200席を超え、近年は狂言の台本も手がける。著書に『落語大阪弁講座』『よむらくご』『5分で落語のよみきかせ』など。
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