インタビュー

Thai Life: タイで見つけた気づきの生活(3)

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翻訳家・浦崎雅代さんによるタイ仏教についての連載です。(全4回の3回目)

——前回のインタビューでは、タイの開発僧、主にスカトー寺の開発僧の方の活動を研究していた大学院時代についてお伺いしました。ついにというか、タイの大学に就職、そして、タイで生活することを選択されたのですね。

はい。その後、念願の東京の大学に行きました。東京工業大学の大学院に入り、文化人類学者で、「癒し」という言葉を日本に広めるきっかけとなった上田紀行先生というすばらしい先生に師事しました。博士課程を終了後、2010年には、不思議なご縁でタイのマヒドン大学に就職することになります。

2016年に日本のニュースでも報道されたと思いますが、プミポン国王とよばれ国民に非常に敬愛されていたラーマ9世が亡くなりました。その治療にあたったのが、タイで一番大きな病院のシリラート病院で、マヒドン大学の付属病院です。

私が教えていた宗教学部は、規模は小さくアットホームな感じでした。そこで大乗仏教と新宗教、生と死に感する授業を持たせてもらいました。学生は仏教徒だけではなく、キリスト教、イスラームの子もいました。仏教徒の中にはお坊さんもおりました。

タイの子たちは、日本が大好きです。たとえば日本のアニメーションはすごく人気で、私より彼らのほうが良く知っていましたね。一学年に一人は、必ずアニメオタクがいましたよ。

あと、日本の歌手にも詳しいです。私のほうが全然話についていけないほどです。それぐらい日本のことを知りたい、日本に行ってみたい、日本語が勉強したいという子がタイには多いです。

ただ日本の宗教についてはほどんど知りません。タイ語になっている情報もほどんどありませんから。 実際、授業で学生から日本の宗教についての質問を受けると、なるほど! タイ人からそういう風に見られるのか! という新鮮な発見がいくつもありました。

日本のお坊さんをイメージしていただくと、黒い袈裟を着た方が多いですよね。儀式の時には袈裟を着るけれども、儀式以外は普通の洋服を着ています。

これはタイではあり得ない光景なのですね。お坊さんになったその瞬間から、お坊さんをやめる瞬間まで、いつもあのサフラン色の袈裟です。そして、日本のお坊さんは結婚している、という説明をすると、学生はみんな困惑して固まってしまいます(笑)。

日本は逆ですよね。もしお坊さんが独身だったら、「あなた、早くお嫁さんを貰いなさい」と周りの人から縁談を持ちかけられる。しかしタイでは、お坊さんイコール本当に出家です。日本の人たちが逆にタイ仏教を知ってビックリするのは、お坊さんが結婚してないということと、お酒を飲まないということ。これはもうタイではご法度ですので、これまた日本人は困惑した表情を浮かべられます。やっぱいお互いに知らないことがあるということを、両国の仏教の違いを通して学びました。

このマヒドン大学で教えていたときに、また私の中での転機が訪れました。ご縁を感じて同僚のホーム・プロムオンさんと結婚することになりました。彼もマヒドン大学宗教学部の先生です。結婚式は、学生たちの手作りで準備してくれ、大学の講堂で式を挙げました。

結婚式にのぞむホームさんと浦崎さん

タイでは、新郎新婦が徳を積む機会としてお坊さんを招聘します。私たちの場合は、 私たちが普段教えているお坊さんの学生たちが来てくれました。

いつもは私たちが先生ですから、私たちが教壇に登って教えています。けれど、学生のお坊さんたちはその時、お坊さんとしてのお役目ですから、彼らが今度は壇上に上がるんです。立場がその儀式の時だけ逆転するんです。面白いですね。

タイ・ライフ。お坊さんが日常にいる生活で、私も大学で教えていて楽しかったです。ただ、異国の地で日本のことを教えることも大事でしたけれど、その頃から私はブログでの情報発信をし始めました。

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