悩み相談

「文句ばかり言う夫に、仏教を学んでもらいたい」 答える人:プラユキ・ナラテボー

プラユキ・ナラテボー
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【編集部注】「仏教的カウンセリング」では当ダーナネット編集部が公募した「悩み相談」に解答をしていただいております。
ご相談者の許可のもと編集の上で掲載しています。ご本人の希望で名前は匿名とさせていただきます。

「子どもは社会人となり主人との二人ぐらし。「僧侶とくらしているみたいだ」と夫に言われてしまいます。はじめはプラユキさんの瞑想会に参加したり、一緒に初期仏教を学んでいたのですが、「俺はそこまでいい人間にならなくてもいい」と学ぶことをやめてしまいました。最近では、数年前より二人で続けてきたボランティア活動も足が遠のいてしまいました。

主人は今でもいろいろなことに対し文句を言い続けて一人でイライラしていますが、私に愚痴を言っている時は聴くだけにしています。一度、「そんなに文句ばっかり言っていて、疲れない?」ときいたことがあるのですが、「俺はお前のようにはできないし、普通、一般の人はお前みたいにできないんだ!」とやっぱりキレまくっていました。

仏道を学んでほしい。できないと諦めないでほしい。「普通の人間は、そんな風には考えられっこない!」と言う前に、まず本気でやってみてほしい。そして何事にも感謝する心を持ってほしい。そうすれば文句は減ると思うのです。楽になると思うのです。でも伝えたいけど伝えられない。一体どうすれば伝えられるのでしょうか?」

あなたといっしょに学んでいきたい。それなのに―

作画・鈴木勝美(ざぼん)

ご主人とのパートナーシップが思うようにいかず、苦労されているご様子ですね。お互いに仏縁もあり、瞑想会に参加したり、仏教を学びつつボランティア活動なども一緒にされたりして、幸せを感じていた日々。にもかかわらず、現在は一緒に暮らしていても、ことあるごとにキレるご主人さんの姿に切ない思いをされている質問者さんのお気持ちがひしひしと伝わってまいりました。

また、そんな彼に対し、「仏道を学んで欲しい。出来ないと諦めないで欲しい。『普通の人間は、そんな風には考えられっこない!』と言う前に先ず本気でやってみて欲しい。そして何事にも感謝する心を持って欲しい」と、そう思われる質問者さんの強い願いも伝わってまいりました。

ただ、ここはどうか焦らないでください。私たちは結果を性急に求めるあまりに、今ここでの相手の辛い気持ちに寄り添ってあげられず、「こうしてほしい」を要求してしまいがちです。ご主人も穏やかで安らいだ気持ちでいたいと思っていることでしょう。しかしそれができない。そんな自分をふがいなく思っていることと思います。そうした状態にある人に「感謝の気持ちを持つ」「仏道を学ぶ」ことはハードな課題です。

「感謝の気持ちを持つ」ことは心に余裕がないとできません。しかし、いまご主人は自分自身で心のコントロールができず、余裕が持てない状態です。また、「仏道を学ぶ」は後回しでいいのです。今ここで怒りに苛まれて苦しんでいる彼の気持ちに寄り添ってあげてください。彼の心を丸ごと受け入れてあげて、心に余裕が生まれてくるきっかけを作ってあげましょう。

そのために私がお勧めしたいのは、まずは質問者さんご自身が、ご主人の怒りの言葉を聞いて辛く感じる自分の心をあるがままに受け止めてあげること。そしてその心の奥にある落胆、不安、願望の気持ちも受容してあげてください。

そのようにして、自身の中に生ずる気持ちをあるがままに受容できるにしたがって、ご主人の怒り、思うようにいかない辛さにも深く共感できるようになることでしょう。そうすると、彼に対するあなたの言葉にも深い思いやりのニュアンスが込められるようになり、キレることもきっと減っていくと思います。そしてそのうち、「一緒に仏道を学ぼう」とご主人の方から言ってきてくれる日がきますよ。どうぞ焦らず辛抱強く、今ここでの彼の気持ちに寄り添ってあげてください。応援しています!

 

プラユキ・ナラテボー

 

プラユキ・ナラテボー
1962年、埼玉県生まれ。上智大学哲学科卒業。大学在学中よりボランティアやNGO活動に深く関わる。
タイのチュラロンコン大学大学院に留学し、農村開発におけるタイ僧侶の役割を研究。1988年、瞑想指導者として有名なルアンポー・カムキアン師のもとにて出家。以後、自身の修行のかたわら、村人のために物心両面の幸せをめざす開発僧として活動。またブッダの教えをベースにした心理療法的アプローチにも取り組み、医師や看護師、理学療養士など医療従事者のためのリトリート(瞑想合宿)がスカトー寺で定期的に開催されている。
近年は、心や身体に問題を抱えた人や、自己を見つめたいとスカトー寺を訪れる日本人も増え、ブッダの教えをもとにしたサポートを行っている。日本にも毎年招かれ、各地の大学や寺院での講演、ワークショップから、有志による瞑想会まで、盛況のうちに開催されている。

プラユキ・ナラテボー師 よき縁ネット https://blog.goo.ne.jp/yokienn
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」を生きる タイで出家した日本人僧の物語
著者:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,800円+税
発行日:2009年8月
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方
著者:カンポン・トーンブンヌム
監訳:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2007年11月
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