〝Search Inside Yourself〟から〝Souji Inside Yourself〟へ
【松本】
ロンドンのブディストセンターで、宗教はなにって聞くと、予想どおりで「うちはキリスト教です。けれど、生き方はすごく仏教からインスパイアされています」。それが大事なものになっている。「じゃあここに来ている人は仏教にコンバート(改宗)するの?」「いやそんな人はいないよ。だって、仏教は別に宗教じゃないもん」。
「逆に日本では、Buddhismが宗教になっていて、いろんな慣習と結びついていて。Way of Life の部分がむしろ見えなくなっていることは不幸なことだね」という話をしました。けれども僕は宗教がいらなくなるわけではないと考えています。
日本で一番、「ポスト宗教」的な場所は、東京だと思います。都市部と田舎では全然違うわけです。世界がいきなり脱宗教的なウィズダムに席巻されるかというと、そんな単純な話じゃない。
最後に荻野さんに質問したいんですけど。いいと思うんですよ。Search Inside Yourself。なんか賢そうな。おしゃれな感じがする(笑)。けれど、どんどんおじいちゃん、おばあちゃんがとりのこされていくんですよ。
教育レベルや収入レベルもアッパーな人たちで盛り上がるのはいいとして、世界は、そういう人たちだけで構成されているわけではなくて。ある意味、お寺の一階も、結構、重要なんですよ。もとめられているからあるわけですからね。二階だけおしゃれにしつらえてもね。その一階と二階をいかにブリッジするのかというのが、わたしの問題意識としてあります。
【荻野】
一階は紹圭さんに任せます(笑)。宗教も経済もスポーツ界もヒエラルキー構造が、ブッカ・ワールド*の中では機能しなくなっちゃう。
*ブッカ・ワールド(VUCCA World)は、アメリカの略語で、変化しやすく(Volatile)、把握できず(Uncertain)、混沌とし(Chaotic)、複雑で(Complex)、多義的な(Ambiguous)世界のこと。
トップダウンでも、トップが考えている以上に世の中どんどんどんチェンジしている。組織論でいうと、ヒエラルキーからホラクラシーやティール組織という方向に行っているわけですね。
中心にリーダーだったり、コミュニティだったり、会社の理念だったりがあり、それが水平にどんどん繋がっていくような自律分散的になっていく組織です。僕の役割は機能しなくなったヒエラルキーをぶっ壊したいと思っている。
そうして、システムとか法制度とかが変わっていく。本当に時間のかかることだと思うんですけど。そして、おじいちゃんやおばあちゃんとか、孫とかなんか変わっていったりする。一人一人のアウェアネスや気づきが大事だと思っている。そして、おじいちゃんおばあちゃんをケアする人も増やす。
【松本】
私は、荻野さんにレフトビハインドされた人たちをケアしていこうと思います。阿弥陀如来は誰も取りこぼさないっていうことですので。私が最近注目しているのは、「掃除」。
私も、ローカルなお寺の檀家さんが集まっているところで、講演会とか法話会とかするんです。でも、マインドフルネスとかメディテーションという感じではないですよね。
「掃除」って、誰にも出来て、誰の生活にも関係があって、割と日本人が得意。そして、私がレフトビハインドしたくないのはお坊さんでもある。そういった人たち、誰もができるマインドフルなプラクティスは「掃除」だなと思っています。それこそ、荻野さんが〝Search Inside Yourself〟なら、〝Souji Inside Yourself〟で行きますよ(笑)。
【荻野】
僕も「掃除」は、日本のキラーコンテンツとしてのマインドフルワークだと思っています。
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