【編集部注】「仏教的カウンセリング」では当ダーナネット編集部が公募した「悩み相談」に解答をしていただいております。
ご相談者の許可のもと編集の上で掲載しています。ご本人の希望で名前は匿名とさせていただきます。
「占いが気になります。占いの結果で、その日の気分が浮き沈みします。あと、パワーストーンなどのグッズを集めるのが好きです。満月の夜の浄化も欠かしません。仏教でいう「瑠璃光」が、ラピスラズリと聞いて、お気に入りのパワーストーンになりました。自分では気休めと思って集めているのですが、家族には度を超していると言われます。スピリチュアル系にハマっているわけではないのですが、どのようなことを気をつければよいでしょうか?」
「占いも一つの情報にすぎません」by ナラテボー
作画・鈴木勝美(ざぼん)
占いにまつわるご相談ですね。まず、占いというものが絶対ではないということは理解できるでしょうね。試しに自分の性格なり運勢なりを世に出回っている様々な占いで占ってみれば、互いに相反した回答を見出だすことはそう難しくはないでしょう。またたとえ同じ系統の占いでも、占い師により様々な異なった回答が与えられるでしょうからね。
ブッダの教えによれば、「良き環境に身を置く」ということも吉祥の一つと説かれています。ですから、お気に入りのパワーストーンなどを身近に置いておくことも環境を整えるという意味で、効果も発揮するかもしれません。しかしあれもこれもと買い集め、過度に依存的になってしまうのは良くないでしょうね。
ブッダは「自らを拠り所にせよ。法を拠り所とせよ。他を拠り所としてはならない」と説かれました。いくら信頼する人、たとえそれが師のアドバイスであっても鵜呑みしてはならない。法に照らし合わせ、自らで理性的に吟味し、自分で責任をもって道を選択していくことを求めました。
占いがあなたの感情や生き方に影響力を持っているという点では、あなたが信頼している人からのアドバイスくらいに位置付けられるのではないでしょうか。しかし、そのアドバイスに翻弄されて気分を浮き沈みさせる必要はありません。
例えば、「忘れ物をしやすい日ですよ」といった占いであれば、忘れ物をしないように心がければいいでしょう。また、「人間関係でいいことがあります」といった占いであれば、「いい人間関係が築けるように積極的にこちらから挨拶をしよう!」と、占いを参考にして、普段は気づかずにいたことにも思いを馳せ、ブッダの教えにしたがい、善きことを積極的にやっていかれるといいでしょう。
占いであれ、誰か身近な人の意見であれ、一つの与えられた情報にすぎません。それを苦しみの種にする必要はありません。そうしたアドバイスを参考意見として自分自身でよく吟味して、人生に生かしていくように心がけてください。
プラユキ・ナラテボー
タイのチュラロンコン大学大学院に留学し、農村開発におけるタイ僧侶の役割を研究。1988年、瞑想指導者として有名なルアンポー・カムキアン師のもとにて出家。以後、自身の修行のかたわら、村人のために物心両面の幸せをめざす開発僧として活動。またブッダの教えをベースにした心理療法的アプローチにも取り組み、医師や看護師、理学療養士など医療従事者のためのリトリート(瞑想合宿)がスカトー寺で定期的に開催されている。
近年は、心や身体に問題を抱えた人や、自己を見つめたいとスカトー寺を訪れる日本人も増え、ブッダの教えをもとにしたサポートを行っている。日本にも毎年招かれ、各地の大学や寺院での講演、ワークショップから、有志による瞑想会まで、盛況のうちに開催されている。
「気づきの瞑想」を生きる タイで出家した日本人僧の物語
著者:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,800円+税
発行日:2009年8月
「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方
著者:カンポン・トーンブンヌム
監訳:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2007年11月
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