インタビュー

ティク・ナット・ハン「マインドフルネス」が上陸した日 その2

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――島田さんはプラムヴィレッジの正会員ということですが、日本人で何人くらい正会員の方がいらっしゃるのですか。
日本に10人前後います。

オーダー・オブ・インタービーイング(order of interbeing)を省略して“OI”メンバー と呼ばれています。Iは、インタービーイング(ティク・ナット・ハンが作った言葉で、相互存在・縁起のこと)で「無我」を意味し、Oは教団ということです。このインタービーイング教団(OI)は、世界のプラムヴィレッジの礎になっており、60年代にベトナムで「ティエプ・ヒエン教団」として結成された組織の英語名です。オーダー・オブ・インタービーイングの正会員が10名前後いるということです。

さらに世界中に在家の先生とか出家の先生、いわゆるダルマ・ティーチャー(法師)と言われる人たちが、正確にはわかりませんが、数十人はいるのかな。リトリートを主宰し、法話などを通して教える資格を認められた人たちです。

――それは、ティク・ナット・ハン師が指名されるのですか。

彼ひとりではなく、プラムヴィレッジサンガの中心的なメンバーが、本人の志願や仲間からの推薦にもとづいて決めるようです。そして法灯そのものは、ベトナム臨済宗の法嗣であるティク・ナット・ハンから授けられます。法灯をちゃんと受け継いで教えていく人、それがダルマ・ティーチャーと言われる人たちです。

――それは、出家者の集団で認め、任命するということですか。

そうです。サンガ(パーリ語、漢訳:僧伽)で認めます。ティク・ナット・ハンは今、倒れられて言葉が出ない状態ですので、なおさら、出家者の集団――実際には中心となる古いお弟子さんたちのグループがあるわけですが――そういう方たちの話し合いで、(今はティク・ナット・ハンの代わりに弟子が)法灯を授けるという儀式があるわけです。
そういう儀式があって、正式な先生になるということです。出家に限らず、四衆(出家、在家の男女)サンガというように、プラムヴィレッジでは在家の先生も認めています。在家で、ご夫婦でダルマ・ティーチャーになった方もいらっしゃいますし、そういう方が日本にもみえています。ですから、今、学べる機会はたくさんあります。

我々も自主的に瞑想会をやっていますが、そうやって時々、先生と呼ばれる方が来てくださるということです。そういうことで、日本人の出家の方も4人いますし、そういう方たちが日本に帰国して中心となり、決まった場所をやがては持ちたいという話はしています。

――わかりました。これからは日本でのプラムヴィレッジが期待されるところですね。(次回に続く)

「ゆとり家」の将来構想について語る島田さん

国内のティク・ナット・ハン瞑想会や出版情報は、『ティク・ナット・ハン マインドフルネスの教え』を参照

https://www.tnhjapan.org/

島田啓介 しまだ・けいすけ
1958年、群馬県生まれ。精神保健福祉士(PSW)・カウンセラー、翻訳家、大学講師、ワークショップハウス「ゆとり家」主宰。1995年のティク・ナット・ハン来日ツアーの世話役の一人。マインドフルネスをテーマにした瞑想会、講演、研修、講座などを各地で行なう。翻訳書や雑誌等への執筆多数。ティク・ナット・ハンの翻訳に『ブッダの幸せの瞑想 マインドフルネスを生きる─ティク・ナット・ハンが伝えるプラムヴィレッジの実践』(共訳)『今このとき、すばらしいこのとき Present MomentWonderful Moment 毎日が輝くマインドフルネスのことば』(以上、サンガ)、ほかがある。来年2月には、『ティク・ナット・ハン詩集(仮)』発刊の予定。
ティク・ナット・ハン(釈一行)
1926年ベトナム中部生まれ。禅僧、詩人、人権活動家、学者。ベトナム臨済禅(竹林派・柳館派)の法嗣であり仏教界で中心的な地位を占めながら、ベトナム戦争中和平をうったえる活動の結果、国を追われフランスに亡命。1967年には、親交の深かったキング牧師からノーベル平和賞に推薦された。
南部ボルドー地方に仏教僧院・瞑想センターである「プラムヴィレッジ」を創立。在家の瞑想実践者を含めて世界中から多くの参加者を集め、日々の生活の中のマインドフルネス、平和の創造、共同体形成、社会奉仕活動の指導・実践を行っている。
現在700名を超える僧侶を中心に、世界中にプラムヴィレッジの僧院・瞑想センターが設立され、自主的な瞑想会の集まり(サンガ)も数百を数える。1995年には来日し、3週間にわたって全国ツアーを行った。現在日本国内の定期的な瞑想実践会は十数か所。邦訳書は30冊を超える。
21世紀に入るととくに、「応用仏教Applied Buddhism」の名のもとに、アメリカ連邦議会、ユネスコ本部などの国際機関、グーグル本社などの多国籍企業、教育機関、刑務所、医療施設などでひろく講演・リトリートを行い、世界的にマインドフルネスが広まるきっかけになった。
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