悩み相談

「結婚し、家族を持った方が良いのでしょうか?」 答える人:プラユキ・ナラテボー

プラユキ・ナラテボー
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【編集部注】「仏教的カウンセリング」では当ダーナネット編集部が公募した「悩み相談」に解答をしていただいております。
ご相談者の許可のもと編集の上で掲載しています。ご本人の希望で名前は匿名とさせていただきます。

「37歳会社員です。仕事も順調で、会社からも評価されており毎日が充実しています。一人でいることが苦にならないので、週末などは、趣味のソロキャンプを楽しんでいます。

しかしながら、同期の仲間はみな結婚しており、独身なのは私一人です。そのため、『独身』ということに劣等感を感じないかと言えば、多少は感じることもあります。離婚をしている友人などの話を聞くと、家族を持たずに生涯独身という生き方もあるのではないかと思います。長男でもあるので、『いい年でしょ!いつ結婚するの!』と母親から相当なプレッシャーをかけられています。結婚しない、家族を持たないという選択は、親不孝なのでしょうか?

正直、自分以外の人間の人生に責任を持つことに抵抗も感じます。『結婚し家族を持つ』という選択肢のベネフィット(便益)とコスト(費用)を考えると、『結婚し家族を持つ』ということに積極的な理由も見いだせないのが本音です」

「結婚するかしないかが重要ではありません。自信を持ってあなたなりの人生を歩んでいかれたらいいでしょう」by ナラテボー

作画・鈴木勝美(ざぼん)

なるほど。生涯未婚率もどんどん上昇している今日、こうした悩みを抱えている人、きっと多いのではないかと思います。

結論から言えば、「家族を持たずに生涯独身という生き方もある」ことは確かでしょう。現に生涯独身で充実した一生を全うされた人はたくさんおりますし、今も独身でイキイキと生活している人はたくさんいると思います。かくいう私自分もそんな身です。

「結婚しない、家族を持たないという選択は、親不孝なのでしょうか?」という点に関して言えば、例えば私のお寺のあるタイですと、子どもが結婚せずに僧侶となるという選択は、親不孝どころか最高の親孝行とみなされています。実際に仏教の開祖であるブッダも結婚はしましたが、その後ほどなくして出家し、「家族を持たない」という選択を取りました。それがゆえに今日何億人もの人がブッダの教えの恩恵に浴することができているわけです。

また逆に、『仏教サイコロジー』(サンガ刊)という本で対談した藤田一照師は僧侶でありつつ結婚され、自分以外の家族の人生にも責任を持つことを選択されたことにより「より一層人生が充実することになった」と語られていました。

そんな意味で、結婚するかしないかが重要ではありません。親が結婚をするようにと迫ってくるのも、親なりにあなたの幸せを願っているゆえでありましょう。ですから親のそうした気持ちを尊重しつつ、あなた自身が幸せな姿を親に見せてあげるのが一番だと思います。

また、同期の仲間と比較して劣等感を感じる必要もありません。あなた自身がそれをよしと思うなら、堂々と独身ライフを貫かれていかれたらいいでしょう。

人間いろいろな事情があって、結婚したり離婚したり、また独身でいる人もいますが、大事なのはそうしたステータスではなく、あなたが今現在、本当に充実した人生を過ごしているか、出会う人一人ひとりとの関係を大事にされているか、ということではないかと思います。そうしたことができているなら、自信を持ってあなたなりの人生を歩んでいかれたらいいでしょう。またそうした中で、「この人と結婚して、人生を歩んでいってみたい」と思う人が現れたら、そこで結婚されるのももちろんよろしいかと思います。

この世は無常です。状況は刻々と変わっていきます。人生には思いもかけぬ縁が生じてくることもあります。どんな状況が現れてきても、「自らを拠り所とし、法を拠り所として」自信を持って対応できる力を日頃から培っておくことをお勧めしたいと思います。

プラユキ・ナラテボー

プラユキ・ナラテボー
1962年、埼玉県生まれ。上智大学哲学科卒業。大学在学中よりボランティアやNGO活動に深く関わる。
タイのチュラロンコン大学大学院に留学し、農村開発におけるタイ僧侶の役割を研究。1988年、瞑想指導者として有名なルアンポー・カムキアン師のもとにて出家。以後、自身の修行のかたわら、村人のために物心両面の幸せをめざす開発僧として活動。またブッダの教えをベースにした心理療法的アプローチにも取り組み、医師や看護師、理学療養士など医療従事者のためのリトリート(瞑想合宿)がスカトー寺で定期的に開催されている。
近年は、心や身体に問題を抱えた人や、自己を見つめたいとスカトー寺を訪れる日本人も増え、ブッダの教えをもとにしたサポートを行っている。日本にも毎年招かれ、各地の大学や寺院での講演、ワークショップから、有志による瞑想会まで、盛況のうちに開催されている。

プラユキ・ナラテボー師 よき縁ネット https://blog.goo.ne.jp/yokienn
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」を生きる タイで出家した日本人僧の物語
著者:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,800円+税
発行日:2009年8月
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方
著者:カンポン・トーンブンヌム
監訳:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2007年11月
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