住職のご紹介の後、「御仏の心と絵本『リトルブッダ』」と題して、朝比奈住職が法話をされました。 朝比奈住職は仏教の来歴について解説。
法話の中で住職は「仏教は歴史や国を経てさまざまな宗派が現れました。その中で仏教者の思うところは一つ、葉先生の『リトルブッダ』最後の所にもございましたけれど、もう心配しなくてもいいんだ。みんな全て『もっている』んだ」
「これを我々は『仏性』という言い方をしますけど、 臨済宗で円覚寺の管長をかつて勤めていた私の祖父にあたる朝比奈宗源老師は、『仏心』という言い方をしていた」
「必ず、みんな仏心を持っている。仏心の中に生まれ、仏心の中に生きて、そして死んでいく。この中に必ず仏の心というものがあるのだ。どんな人でも同じなんです。『リトルブッダ』に限らず、葉先生のいろんな本がそういう世界を表していることを。葉先生自身がそういうことを感じていらっしゃるという事がよくわかると思います」
「葉先生の絵の表し方も素晴らしい。抜けるような青の中に、ポツンとちっちゃな『リトルブッダ』が居います。ちっぽけなんだけれども決して弱々しい存在ではない。でもその中に芯の強さみたいなものを感じる。そういう描き方ですよね。これが葉先生の本質なんだと思います。それを思うと、『みんな仏心を持っている』『みんな仏性を具えている』ことを信じざるを得ないと思います」と述べられました。
次いで、坐禅についての説明に移りました。まず最初に、朝比奈住職が所属する臨済宗の坐禅の方法や公案禅(老師と弟子の問答)について概説、そしてイスを使った入門者向けの坐禅の作法について解説されました。
(1)背もたれにもたれ掛からず、浅く腰掛けて、腰をしっかり立てて座ります。
(2)頭のてっぺんから、お尻まで、棒が通っている感じで芯を通します。
(3)だいたい1メートル先くらいのところに視線を置きます(正面を向いて視線を置けば自ずから「半眼」となります)。
(4)手は右手を先に置いて、左手をその上に重ねて親指の先を合わせるようにします(右手と左手が逆になっても構いません)。
(5)重ねた手のひらを自然におへそに近いところにスッと置きます。
(6)ずーっと呼吸することにより、手のひらの内にたっぷりと気が溜まっていくことをイメージします。
(7)口をしっかり閉じて、鼻だけで呼吸します。
(8)(臨済宗の修行道場では「吐いて吸い」ます)鼻から息をゆっくりと吐いていきます。ゆっくり吐いて吐いて吐いて、これ以上吐けないところまで、しっかり吐き切ります(この時におへその下のところに、うーっと力が込められるようにします)。
(9)吐き切ったら、また鼻で、お腹に息をたっぷりと溜め込んでいきます。
(10) 吐いて吸うという「呼吸」を1回。次の吐いて吸うが2回。3回といったように、頭の中で声に出さないで、自分がしている呼吸を数えていきます。10まで数えたら、また、1回目の呼吸に戻ります。
この呼吸を数えることを数息観と呼びます。余計な雑念が湧いてしまうことを防ぐ意味もあります。
坐禅をする時は必ずお線香を立てます。時計のなかった時代には時間を計る方法として使われ、普通の坐禅会では20から25分が一区切り、 坐禅道場では45分から1時間が一区切りが一般的だそうです。 線香一本が燃え尽きる時間を一区切りとし、「一炷」座ると言います。
朝比奈住職の説明よれば、修行道場で修行者がどれだけ頑張ってある一定のところにいったのかを知る表現があるそうです。
住職は「私がお世話になった足立大進老師は、『蚕がたくさん桑の葉を食べて食べてじっと動かなくなって、これから繭を作ろうかという時に透き通ってくる。この状態を「ひきる」』と言ったそうです。 「修行者は蚕がひきった状態にならなくちゃいけない。それは要は側から見てもわかるようになるんだ」とよく言われたそうです。
参加者全員でイス坐禅を体験
最後に、朝比奈住職は、「鎌倉宗教者会議」を代表して、3月10日(日曜日)午後6時から仏教界による「東日本大震災」の犠牲者への「万灯供養の夕べ」が亀ケ谷坂切通し先にある浄光明寺で行われることを案内されました。
また、3月11日(月曜日)には、カトリック雪ノ下教会で、「東日本大震災追悼・復興祈願祭」が行われることを告知し特別イベント「御仏の心と絵本『リトルブッダ』は終了しました。
臨済宗円覚寺派浄智寺住職
平成元年、駒澤大学佛教学部禅学科を卒業後鎌倉円覚寺派専門道場に掛搭、足立大進老師より指導を受ける。平成8年に下山後、居士林主事、円覚寺派宗務部員を拝命、平成29年に円覚寺派教学部長を辞任するまで円覚寺本山へ奉職する。
平成23年の東日本大震災の1か月後に行われた追悼・復興祈願祭をきっかけに立ち上げられた、信仰・宗派の垣根を越えた鎌倉宗教者会議の創設メンバーの一人。現在、鎌倉宗教者会議の事務総長を拝命している。
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