「忄」は心。象形は「」。旧字は「」(りっしんべん)。
「こころ」といえば、多くの人は胸に手を当てる。感情や意志をつかさどるのは脳であるが、頭を指す人は少ない。
推測するに、古代では生肉の保存法は未発達であり、生肉を傷めずおいしく解体するには、血に汚れることのないよう、心臓は傷つけなかったはずだ。
動かなくなった獣の体内で、心臓だけが脈打っていたとすれば、《中に魂がいる》と思っても不思議ではない。
「青」は、生と丼(旧字の井戸)からなり、清く澄み切った水のこと。
清くある平常心に、喜怒哀楽が起こると、それに感じて「心」がさまざまな働きを始める。このことを「情」というのである。
書・文
樂篆家
樂篆家
髙橋 政巳(たかはし まさみ)
1947年、福島県生まれ。樂篆倶楽部主宰。刻字家。自身を樂篆家と称し、篆書をはじめとする書を通じ、文字のもつ歴史的意味や美しさの伝承に力を注ぐ。毎日展審査会員、NHK文化センター講師、日本刻字協会常任理事および審査員、会津欣刻会会長を務めた。主な著書に『感じの漢字』『感じる漢字』など。2015年没。