介護が必要な高齢者に多い排便トラブルの一つに便秘があります。
今回は、その傾向と対策について述べたいと思います。そもそも便秘とは、排便回数だけでなく、便の硬さも含めて判断するものです。
たとえば、三日に一度しか排便はなくても、バナナのような整った形状の便が出ていれば便秘とは考えません。逆に毎日お通じがあっても、硬く乾燥したウサギのようなコロコロした便で、排便時に必要以上に力んでも出ないようであれば、それは便秘です。
便秘の原因
便秘には、一過性のものと習慣性のものとがあります。
一過性の便秘とは、旅行などの環境の変化、緊張やストレス、偏った食事、水分不足などによって引き起こされるもので、すぐに改善されます。一方、習慣性のそれは便が直腸まで下りてくるものの、そこから出すことができず滞留する「直腸性便秘」と、加齢で大腸の動きが悪くなって便が直腸に送られない「弛緩性便秘」などがあり、これらは長引く傾向にあります。その他には、大腸の病気が直接の原因の場合も考えられます。
とくに、高齢者によく見られるのは習慣性の便秘です。 その原因の一つに、オムツ着用の問題があります。オムツを着けて寝たままの姿勢では腹圧がかからず、便は出にくくなるのです。
治療法としては、座薬や浣腸という方法もありますが、下剤の服用が一般的です。しかし、前回、薬の〝多剤併用〟の危険性について述べましたが、便秘のときも同様で、下剤に頼ってしまうと「便秘→下剤→下痢→便失禁→下痢止め→便秘」という悪循環を日常化させてしまうおそれがあります。
便秘の改善方法。イラスト1
便秘に対する薬の副作用については、まだ多く語られていないのが現状ですが、下剤の服用を習慣化すると、大腸に悪影響を及ぼしかねないことがわかってきました。たとえば、即効性のある「アントラキノン系」という下剤を長期にわたって服用していると、大腸が真っ黒に変色する「大腸黒皮症」と呼ばれる病気になることがわかってきたのです。