お父さんのための介護教室

第3回「負のスパイラルからの転換」

医師 髙瀬 義昌
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  (写真・PIXTA)

五つに分類できる虐待

今回は、介護に携わる男性が陥りやすいといわれている虐待がテーマです。
前回、男性は、長年の経験で培ってきた仕事感覚を介護にもち込むことについて紹介しました。仕事のように自分のイメージどおりにはいかない介護の現実とのギャップから落胆し、心身のバランスを崩してしまうという「負のスパイラル」のとば口ともいえる状況になります。介護ストレスから睡眠障害や、うつ病を発症してしまいます。最悪の場合、虐待、さらには無理心中にいたることもあります。

両親、祖父母、妻が認知症になってしまうと、以前にはできていたことができなくなり、徘徊、失禁など同じことをくり返したりということが現実に起こってきます。ときにはもっとも介護をしてくれる相手を泥棒扱いし、物を投げたり、暴力をふるったりすることに対して、介護をしている人が耐えられなくなり、怒りの衝動が起きてしまうことは、大なり小なり誰にも起こりうることです。何といっても人間は感情の生き物なので、上手くいかない介護に憤ってしまうのは理解できます。しかし、憤りを感じても、それを理由に行動すれば、余計、負のスパイラルに陥っていくだけです。

ひと言で虐待といっても、その内容は千差万別です。体はもちろんですが、心を傷つけること、世話を放棄することも虐待です。その特徴は、大きく五つに分類されます。
一つ目は、暴力行為によって、身体に傷やあざ、痛みを与える「身体的虐待」。二つ目は、威圧的な言葉や態度で脅したり、侮辱を与える、無視するなどの精神的な苦痛を与える「心理的虐待」。三つ目は、食事や水分を与えない、入浴をさせないなど介護者の生活環境、身体と精神の状態を悪化させる「介護や世話の放棄」。四つ目は、日常生活で必要な金銭を渡さなかったり、預貯金や年金などを本人の合意なしに使用する「経済的虐待」。五つ目は、本人を辱めるような性的な行為を強要する「性的虐待」です。

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