お父さんのための介護教室

第5回 介護の経済的負担を減らすために

医師 髙瀬 義昌
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介護にかかる費用

これまで男性がよりよい介護を行なうための対策を中心に述べてきましたが、今回は、介護生活で生じる経済的な負担についてお話ししようと思います。

介護にかかる費用はあまり知られていませんが、それなりの経済力は必要となります。ですから、月の年金支給額が10万円以下という人には厳しい状況にあるといえます。

たとえば、認知症になった家族を、とりあえず施設に1カ月面倒みてもらうとします。ある程度安全性が確保されている施設を利用しようとすると、それ相当の金額が必要になります。東京都では特別養護老人ホームやグループホームにかかる費用は平均20万円ぐらい。病院や施設によっては、3カ月で百万円以上かかることもあります。

そのような施設ですら入居には何百人待ちの状態ですので、どうしても費用が抑えられる在宅介護を選択する人が多くなります。しかし、在宅介護にかかる経済的な負担を軽減するための情報を知らないと、かえって損することにもなりかねません。特に患者の状況によってさまざまなサービスが受けられる介護保険の制度について知っているかどうかで家族の負担も減り、生活の質も大きく変わってきます。

訪問診療は医療保険で支払いますが、訪問看護ステーションによるリハビリテーションは、介護保険の適用を受けているかどうかで、医療保険での支払いになるか、介護保険での支払いになるかが変わってきます。

訪問看護を月8回医療保険でまかなうと、1割負担の人の月額負担は約7200円、3割負担の方は約22000円です。介護保険ではすべての人が1割負担ですから、1時間半の訪問看護を月8回依頼する場合、誰でも月額約9000円の支払いとなります。

ということは、1割負担の患者さんが医療保険で月2回の訪問診療と週2回の訪問看護を受けた場合、支払額はだいたい16000円で、これに薬代が上乗せされると2万円を超えることもあります。しかし、医療保険での支払いには上限がありますので、70歳以上の一般世帯であれば、12000円以上払う必要はありません。しかし、介護初心者のなかには、「介護保険はすぐ使える」と勘違いしている人が多くいます。介護保険は健康保険証を出してすぐに利用できるものではありません。

まずは「要介護認定・要支援認定」の申請を行ない、介護が必要なのか、どれくらいの要介護度なのかの判定を受けなければなりません。

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