一人で問題を抱えてしまう男性
4年前、当時佐賀県知事だった古川康さんの講演を聞く機会がありました。県では認知症の介護に取り組む人への電話相談窓口を開設しているそうです。ところが、なかなか相談の件数が伸びないということでした。
それでも相談してくるのは、他家に嫁いだ女性が里帰りしたときに、おじいちゃん、おばあちゃん、両親の様子が変だというケースがほとんどで、男性からの電話はまったくないとのことでした。
実際、介護についても男性は、人に頼るなど沽券にかかわると世間体を気にして一人で抱えてしまう現実があります。
それぞれ家庭の事情があるのでケースバイケースですが、職場、家庭で、常に責任を求められてきた男性は、介護に携わる状況においても自分一人でやろうとしてしまいます。律儀に介護の記録をノートに付けたり、あらかじめ一日のスケジュールを決めたりする人が多いのも確かです。
これまでも述べてきましたが、まじめで責任感が強い男性ほど、介護を仕事の延長と思って取り組んでしまうようです。しかし、仕事のようにはいかない介護現場の現実と直面し、やがてそのストレスで自らが体調を崩し、挙句は虐待に至る負のスパイラルに注意することは前回も述べさせていただきました。負のスパイラルに陥るきっかけの一つには、支援が必要な状況にあるにもかかわらず、一人で問題を抱えてしまう男性特有の性格による孤立化、孤独化が挙げられます。
男性には、人に助けを求めるのは恥だと感じる心があります。また、他者からのアドバイスも、それが正論であっても頭ごなしに言われた時点で心の扉を閉めてしまう傾向があります。