可能性を秘めている若者たち
現在の陸上競技部には、もはやあの立ち上げ当時の苦労を知る部員はいません。
勝負に必要なのはハングリー精神です。
ですから、チームが不調に陥ったときなどは、監督も私もその原因を部員たちには言いません。
そして、ピンチをチャンスととらえ、ミーティングの場をもうけるなどして、その原因を部員たち自身で気づくような環境をとり計らうのです。彼らはそこで、何がいけないのかをくり返し話し合います。
「窮すれば通ず」ではありませんが、ピンチに陥ったときこそ、自分たちが何をすべきかが見えてくる。私たちの役割は、その気づきを導き出すまで、彼らを身守るということなのでしょう。
「後生畏るべし」という言葉があります。〈いまどきの若者は〉と、経験の浅い彼らを軽んじるのではなく、多くの可能性を秘めている若者らの進歩を敬うという意味です。
窮地に立っても、こちら側の〈大丈夫だ、彼らは頑張れる〉という無言の一念が通じたとき、部員たちは自分で立ち上がり、自らの能力を引き伸ばしていくのかもしれません。
青山学院大学陸上部部長(同大教授)
内山義英(うちやま よしひで)
1963年、茨城県生まれ。94年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科博士課程修了。同大学国際政治経済学部准教授を経て2011年に教授に就任。一方、2000年に陸上競技部副部長、07年には部長に就き、09年から9年続けての箱根駅伝連続出場、3年連続3度目の総合優勝に尽力する。
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