またインド人は、自然と一緒に生活しています。大自然と闘うのではなくて、大自然とともに生きていこう、体を大自然に順応させようとしています。
山村に行きますと、大家族の暮らしですから家はとても狭いのです。ですから、ほとんどの家族が家の中では生活しません。
青空の下が、彼らの暮らしの基盤です。樹の下で食事したり、寝たりします。家の中は荷物置き場だけです。
食事は葉っぱの皿、飲み物は素焼きの茶わんを使います。飲み終えた茶わんは割って土に還し、葉っぱのお皿は山羊と牛の餌にします。歯は木の枝で磨き、牛糞は藁を混ぜて乾燥させて燃料にします。亡くなった人の体は火葬にしてガンジス川に流します。
アフリカなどでも、こういう生活をしている国がありますが、それは便宜上、そうしているにすぎません。 しかし、インドは仕方なくそうしているのではなく、哲学として自給自足の生活スタイルを選んでいるのです。
世界でも、これだけ長い間の伝統を変えずに伝えている国というのは、珍しいでしょう。
日本の現代の人たちは大自然と闘っているように思います。寒いときは部屋を温め、暑いときは涼しい部屋にして体を守っています。
こうした暮らしは、物理的に快適です。けれども、体を大自然に順応させようするほうが、はるかに健康にはよいのです。
大自然に順応させていく暮らしは、体にきついです。でも、心は楽なのです。大自然と闘うよりも、ずっと心の負担は少ないのです。
マルカス
アサヒトラベルサービス代表取締役・SBI大学院大学講師
インド・デリー生まれ。インド国立デリー大学卒。アサヒトラベルサービス設立。立川談志に入門し、立川談デリーとしても活躍。インド料理店・ブカラをオープン。著書に『インド流!マルカスが紹介するお釈迦様の国』(サンガ)。
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