ブッダの国・インド

理想的な死の迎え方

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画像・AdobeStock

そして、いざ死を迎えるときには、家族や親戚みんなが周りに集まります。その傍らで「私が亡くなったら、こういうふうにやってよ」など、何か言い残していることを伝えたりするのです。

みんなベナレスで息を引きとるという同じ目的のために来ているのです。〈今日はこの人の順番だ。明日はあの人だ。そして、次はいよいよ私の順番かな〉などと、思いを巡らせながら死を待ちます。

ベナレスでは毎日、盛大なプージャ(供養の儀式)が営まれます。日夜、お坊さんたちのお経が聞こえ、人々の祈りの声が響いています。そういうところで、静かに死を待つのは幸せなことなのです。なぜなら、死ぬということは悲しいことではなくて、〈願いがかなった、よくやった〉という、満ち足りた気持ちでもあるのです。

インド人にとって、死は無に帰ることではありません。前世があって、今世があって、来世がある。人生に締め切りはないのです。来世も続くと信じています。
ですから、死ぬということは、ちっとも怖くありません。ベナレスで死を迎えることは、無事に天国へいけることだと信じているので、みんな安らかに息を引き取ります。
死はめでたいことなのです。

マルカス
アサヒトラベルサービス代表取締役・SBI大学院大学講師
インド・デリー生まれ。インド国立デリー大学卒。アサヒトラベルサービス設立。立川談志に入門し、立川談デリーとしても活躍。インド料理店・ブカラをオープン。著書に『インド流!マルカスが紹介するお釈迦様の国』(サンガ)。
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