インタビュー

ティク・ナット・ハン「マインドフルネス」が上陸した日

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ティク・ナット・ハン  英文「般若心経」

――ティク・ナット・ハンの本との出会いが、その後の活動に繋がって来るということなのでしょうか。

先にも触れましたが、中米パナマからワシントンDCまで、ずーっと歩いて行くという巡礼のプログラムに参加していたんですね。10ヶ月ぐらい歩き続けるわけです。

そして、いよいよワシントン DCに辿り着き、 街の大きな書店に行くとティク・ナット・ハンの本がたくさん売っているわけです。代表的な本を何冊か買い求め、それを手にして日本へ戻りました。それが1992年暮れのことでした。

ティク・ナット・ハンは、アメリカでは非常に人気があったことはすでにお話ししましたが、日本では全く知られていなくて、もちろん翻訳書も一冊も出ていない。

そんなとき、中野民夫君がアメリカでの留学から戻って、今、アメリカで流行っているティク・ナット・ハンを、日本に紹介したいと言って仲間を集めたのです。折しも僕が帰国したあたりに同志が合流してチームを立ち上げ、95年に日本での3週間ツアーが実現したということなのです。それが大雑把ないきさつです。

そういうトレンドは、だいたいアメリカから――マインドフルネスもそうですが――入って来ているじゃないですか。ティク・ナット・ハンもアメリカのスピリチュアルのトレンド、新しい潮流みたいな形で入ってきたので、あまり仏教っていう感じじゃなかったのですね。

――日本の出版界では、当時、ティク・ナット・ハンはまったく知られていなかったのですか?

まったく知られていなかったですね。それで来日に合わせて出版の話が、いくつかの出版社から持ちあがったのです。

『微笑みを生きる』春秋社。溪声社からは『ウォーキング・メディテーション――歩く瞑想の本』『ラブ イン アクション――非暴力による社会変革』の2冊。壮神社の『ビーイング・ピース』これは中央公論で文庫化されました。そして『ティク・ナット・ハンの「般若心経」』です。この5冊が、仲間の翻訳者によって来日にあわせて出版されたのです。

これらは、当時としてはものすごく斬新な本でした。斬新すぎて売り上げにはつながらなかったのかも知れませんが。

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