あきらかにするために
“帝”の旧字は“ ”。
一般の神を祀る小さな卓は“ ”で、宇宙の最高の神、天帝を祀る卓は“ ”である。
神霊を憑りつかせる大きな木主(もくしゅ)の形を表わし、“ ”の部分は脚を交差させて三本の木を 印で締めつけ、強化・安定させたさまである。
ここから、「締めつける・まとめる・しめくくる」などの意味となった。
このことから“帝”はのちに天下を治める「みかど」の意味として用いられた。
“諦”(あきらか)とは、はっきりとよく見えることで、「真理」「すべて」の意を表わす。仏教用語では真相をあきらかにし、悟ることをいう。
「もうあきらめよう」「仕方がない」「これでいいだろう」は、日本特有のもの。
本来の意味合いとは随分違って使うことが多いのではあるまいか。
書・文
樂篆家
樂篆家
髙橋 政巳(たかはし まさみ)
1947年、福島県生まれ。樂篆倶楽部主宰。刻字家。自身を樂篆家と称し、篆書をはじめとする書を通じ、文字のもつ歴史的意味や美しさの伝承に力を注ぐ。毎日展審査会員、NHK文化センター講師、日本刻字協会常任理事および審査員、会津欣刻会会長を務めた。主な著書に『感じの漢字』『感じる漢字』など。2015年没。