一生懸命やっているのに
(画像・PIXTA)
ある会社の壮年サラリーマンから、仕事の悩みの相談がありました。
「会社では、お客さまから製品へのクレーム、使い方の説明やアドバイスを電話やインターネットで対応する仕事をしています。
一生懸命、真心込めてお客さまの相談に応え、苦情にも相手の立場を考えて丁寧に対応していますが、仕事は増えているのに人は増えず、仕事がきつくなっています。
業績評価も不透明で給料は安いままで不満です。
一生懸命やっても生活は豊かにならず、どうしたらよいでしょうか」
私はこう答えました。
「商品についての苦情処理やクレームに丁寧に応対し、解決するのは神経を使う仕事で、心のやさしいあなただからこそできる仕事です。
気苦労が多く大変ですね。でも、あなたはこの仕事を通して世の中の人々に立派に貢献しており、その使命があるのです。
あなたの仕事はコールセンター業務と呼ばれていて、販売後のアフターフォローのサービスが継続的な営業のために重要になっています。
各企業は力を入れていますが、実はこの業務は日本人よりも人件費が安いアジアの人に外部委託されつつあります。
中国の大連や台湾など、アジアで日本語が話せる人を採用し、商品知識を徹底的に教え、日本で受けた電話を自動的にアジアに転送して応対しています。
中国人の人件費は日本人の7分の1です。台湾人でも日本人の給料の2分の1です。
企業は製造部門だけでなく、ITの進化で経理や人事給与計算やコールセンター業務など間接部門もアジアへ外部委託しているのです。
あなたはアジア人から見れば高い給料に見合う付加価値のある仕事をしなければ、そのポジションはアジアの人に取って代わられることを自覚してください。
会社が評価してくれないのではなく、自分自身に原因があるのです。
今の仕事は情報の宝庫です。多くの苦情電話からどういう傾向があるのか、商品の改善点を分析して上司に説明し提出するなど仕事をいろいろな角度から見て取り組んでみてはどうですか。
上司のあなたへの見方は変わるはずです。そういう努力をしていけば責任ある立場を任されます。生活も安定していきます。今、決意することが大事なのです」
親鸞の教えに、「平生業成(へいせいごうじょう)」があります。
これは「生きている今、自分の心に一大決心すれば、何のために生まれてきたのか、何のために生きるべきかが分かり、人生の目的は必ずやこの世で達成することができる」というものです。
別の言い方をすれば「人には、その人の使命や役回りがあり、自分が果たすべき使命を心に一大決心して、努力・精進して人さまや世の中に貢献する生き方をすれば、その人の人生における目的や夢は成就できる」という教えです。
仕事では、いろいろなトラブルや困難が起きますが、世の中は自分中心に動いているのではありません。思い通りにならないのが当たり前です。
その時、私利私欲ではなくお客さまや社会のために貢献したい、という高い志や夢を持っているかどうかが人生の分かれ目です。