愛が消費されていく。そして、捨てられた愛が顧みられることは少ない。浮気、不倫、離婚……。
内海麻里子も夫の浮気で離婚した。10歳の息子と病気の両親との暮らし。疲れた心を癒そうと、好きでもない男との付き合いを繰り返す。むなしさの中で彼女は思う。子どもや親から解放されて、はやく老人になりたい……。
夏祭りの日、肝試しに出かけた息子が行方不明になった。捜し歩くうち森で墓を掘りかえしている老婆と出会う。老婆にも夫の浮気に苦しんだ過去があった。老婆の愛は異様な程一途だった。死んで骨になった夫でさえ、ほかの女にとられそうでこわかった。頭蓋骨に語りかける老婆に、麻里子の心が揺らぐ。
愛とは、人を好きになるとは、いったいどういうことなのか……。