冠位十二階
まず「冠位十二階」は、国につかえる役人を階級別にしたものです。それは「徳・仁・礼・信・義・智」の項目に「大・小」をつけて、「大徳・小徳・大仁・小仁・大礼・小礼・大信・小信・大義・小義・大智・小智」の十二階に設定したものです。
これに紫・青・赤・黄・白・黒の冠の色に、それぞれ濃淡をつけて大・小と区別しました。
この冠位十二階は、厩戸王子や蘇我馬子は冠位をさずける立場から除かれていたようです。この制度は、それまで豪族による血縁主義による世襲制とはことなり、能力があれば役人になれ、しかも昇進できるものでした。
ちなみに遣隋使になる小野妹子は、大礼という位でしたが、最後には大徳にまで昇進しています。
この制度は、能力や努力、仕事の成果しだいでは昇進することができるという画期的なものです。これは「十七条の憲法」の第十一条で、すぐれた働きや成果をあげた者、あるいは過失を犯した者は、厳正な賞罰を行なうということに対応するものです。
そこには、生まれによって差別しないという王子の開明的な平等精神が表わされています。
「和を以て貴しとなす」(第一条)で有名な「十七条の憲法」は、おもに役人に対する道徳的な訓戒や服務規程が示されています。
憲法には「君(天皇)」「臣(役人)」「民(国民)」の三つの身分が表わされていますが、とくに「臣」に対して天皇や国民につかえる役人としての心がまえと、守るべき規範が説かれています。
ここには王子が描く理想的な国家像が示されています。それは天皇と役人と国民からなっており、天皇を中心とする統一された国家です。そこには仏教を国是とする倫理的にも完成された国家像が表わされています。
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