噓をつかず、人には親切にする。子供さえ理解できるが、大人でも実行できない。この当たり前の生き方が、瀕死の日本航空(JAL)を再生させた。“稲盛哲学”の力は凄まじい。
もちろん、哲学で経営は変わらない。「アメーバ経営」で知られる経営手法が再建の要だった。社員一人ひとりが経営者の視点に立って仕事にあたる“全員経営”である。新しい取り組みが受け入れられるのは容易ではない。できるだけ多くの社員と向き合うため、昼食はおにぎりで済ませることもあった。日航再建に無給で挑んだ原動力とは……。
3万2千人の社員の生活を守る――その熱意が社員を変えていく。社員が変われば、経営が変わる。経営が変われば、会社が変わる。1155日、再建の物語は奇跡ではなかった。