競争が生む三つの良い点
しかし、深刻な景気低迷を経験した先進国に共通しているのは「平等よりも個人がベストを尽くせば報われるべき」という意識が強いことです。日本人でも8割以上の人がこうした意識を持っています。競争には課題もありますが、以下のような良い点もあるのです。
1.創意工夫を誘発する
市場における競争の意義は、人々の創意工夫を誘発し、新商品などを生み出すことで、社会が進歩する点です。他社よりもより良い製品やサービスを開発して世の中に出し、お客さまの満足が得られれば、企業の業績や社員の処遇も向上します。そこでの競争は、社員同士、同業他社、異業種の企業、海外企業など幾重にもあります。競争がなく何をしなくても同じならば人間の心は緩んでしまいます。一方、課題は競争に負けた場合に敗者復活や救済の道がないと活力がなくなり、貧困、うつ、社会不安などの弊害が生じてきます。
2.得意分野を知り、居場所がわかる
競争によって、人は自分の得意・不得意分野を知ることができ、自分の居場所がわかり、個性に合った生き方をすることができます。スポーツの世界も真剣勝負をすることで、自分の弱点を知り、改善してさらに挑戦します。人は失敗から学び、また挑戦していくのです。企業でも商品開発を他社に先を越された場合、徹底的に分析し、チームを立て直して、さらに良い商品を必死になって開発・販売することで発展し、たくましい社員が育つのです。
3.豊かさと自由が得られる
企業は赤字が続くと市場から縮小・撤退を検討するなど厳しい面もありますが、一方でルールと倫理に基づきアイデアと精進を積んだ切磋琢磨という競争は、私たちに豊かさと自由をもたらしてくれます。競争から逃げずに真正面から取り組み、楽をしたいという自分の心に克つことが重要です。
最後に、企業の「切磋琢磨」による商品開発の事例を数例紹介します。
インドでは、騒音が大きいため大音量が出るテレビやオーディオに人気があり、また多様な民族ゆえに異なる10の言語の字幕が付いたテレビもよく売れています。さらに暑いインドで、化粧品の変質を防ぐために女性が冷蔵庫で保存する習慣に気づいた企業が、冷蔵庫の中にボックスを設けてヒットしました。電子レンジもインドでは幸福を呼ぶ数字「101」にヒントを得て「101のレシピ付電子レンジ」が売れています。
ベトナムは、オートバイ社会であるため、家族全員が乗れるようシートを長くした4人乗りがよく売れています。安全で壊れにくくシートの長い日本製車は人気があります。
インドネシアでは、多数発生する蚊に悩む人が多いことにヒントを得て、人に無害の超音波で蚊の神経を麻痺させる機能をエアコンに付けて発売したところ、部屋で短パン、Tシャツでくつろげると大ヒットしました。
日本のロボット技術、ハイブリッド自動車、デジカメ、電子部品、スマートフォンの高機能化なども、競争で鍛えられて高い評価を得たものです。