著者は真言宗僧侶である。
難しいと一般に考えられている仏教の教理を、これほどやさしく噛み砕いて伝えられる人も少ないだろう。
空、縁起、無常、無我、四苦八苦といった仏教用語の基礎知識を生活の中におとしこみ、見開き2ページで上手に解説してゆく。仏教の基本的な用語など知らなくてもまったく問題ない。
本書では仏教の立場を、ある時はかけがえのない自分という存在に気付いてゆくことであったり、悟りで言えば、それはすべてを受け入れることだったり、といった魅力的な現代の言葉に置き換えて教えてくれる。
「どっしり」「きっぱり」「すっきり」「さっぱり」「にっこり」と、日常のなかの小さな悟りはそんな形で日々訪れるという。
話のよりどころは、真言宗の経典であったり、「般若心経」であったり、「華厳経」であったりとしっかりしたものだが、そんなことはことはおくびにも出さない。著者の解説を理解し、1分間、内省の時間をもつだけで、小さな悟り完成へと導かれるように本書はできている。
気になるリード文のところを気軽に読んでみる。解説文はとりあえず読まずに「1分間悟りレシピ」を試してみる。どんな読み方でもできそうだ。
たかが1分、されど1分。この短い時間に包括された真理への道は考えるよりも優しく身近なものだった。