学歴偏重、うわべだけの付き合い。久松さんにはビジネスマンの生き方が性に合わなかった。28歳で大手の繊維企業を辞め、農業に転身する。自由な田舎暮らしを求めた。
会社を飛び出したが、農業の経験などない。しかし、久松さんには強みがあった。プライドなどもっていない自由さ、足りない自分を認める強さである。鍬が扱えなければ、機械の手を借りる。農家が長年の歳月で培ってきた“経験と勘”は、言葉で書き記し、頭で理解した。経験がないことを言い訳に諦めたりはしない。ただ、謙虚に歩んできた。
現在は久松農園の代表だ。年間50品目の有機野菜を消費者に直接販売している。従業員は7人。農家の出身者はいない。諦めなければ失敗なし――久松さんが挑戦の心を教えてくれる。