目からウロコの仕事力

仕事で新しいことに挑戦し実現させるために──六波羅蜜の実践

中央学術研究所客員研究員 佐藤武男
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仕事に活きる「六波羅蜜」

  (イラスト・PIXTA)

会社で新しいことに挑戦しようとすると、常に社内から反対や抵抗が出ます。反対する人は過去の経験や常識の延長線上で考えるのでリスクを恐れます。企画を通すには「反対する人たちをどう説得するか」が鍵になります。自分は素晴らしい企画を出したけれど反対に遭って出来なかったというのは言い訳なのです。挑戦内容よりも反対する人たちへの説得が難しいのです。

仏教には、「智慧」「精進」「禅定」「持戒」「忍辱」「布施」からなる「六波羅蜜」という教えがあります。

人を説得するには、大いなる「智慧」を働かせなければなりません。智慧とは将来のあるべき姿を示し、私利私欲からではなく本質を掴んで目的、必要性、投入資源、効果などについて説明責任を果たすことです。

反対する人には毎回工夫して、いろいろなアプローチで説明して、その人の心理的障害を取り除いてあげることです。そのためには相手が賛同してくれるまで粘り強く説得する「精進」の行動力が大事。さらに反対されてもブレない不動の「禅定」の心を持ち、新しい企画の商品やサービスを通して社会への貢献という大義を忘れず、自分の軸をしっかりさせることです。また抵抗にも自棄を起こさず気持ちを制御する「持戒」の心と、相手を寛容の心で理解し接点を見いだす「忍辱」の心で取り組むことができれば道は開けます。

説得には共感が必要です。共感とは「自分の個性を大切にしながら相手の感情を共有すること」です。相手が納得するには企画の中身の論理性も重要ですが、自分が語る将来の可能性や新しい価値を相手に共感、賛同してもらうことです。そのためには、相手の意見にも許容できる部分は受け入れる。人は理屈だけでは動かず、意気に感じて協力するなど情で動くもの。共感を得るには日頃から徳を積み、職場での良好な人間関係が大事です。

人は徳分のある人には協力するもの。共感性のある人は、常に物事を全体最適で考え、人を尊重し、人の持ち味を引き出す人徳があります。他の部署とも積極的に連携し、困っていれば進んで協力する「布施」の心で行動しましょう。また、常に穏やかな笑顔で先入観のない素直な「柔和質直」の態度で接し、部下を認め、「手柄は部下に、責任は上司に」で行動する、その積み重ねが人徳につながります。私も仕事で日々自省しています。このように新しい企画→説得→共感→人徳→合意→実行→成果につなげていくことで新しい仕事の企画が成功するのです。

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