お父さんのための介護教室

第1回「男性が当たり前に介護に携わる時代」

医師 髙瀬 義昌
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第1回 男性が当たり前に介護に携わる時代

これまで在宅介護の主役は、妻や嫁の立場の女性が担ってきました。

しかし、これからの時代は、女性と同様に男性も家族の介護を担う可能性が高くなり、親の介護は妻任せではなく、自らが世話をするのが当たり前になるという状況が目前にきているといえます。

そもそも介護をするということは、人の世話をする、ケアをする、援助するということなのですが、この援助自体にもいろいろな問題が含まれています。

たとえば、助けが必要な人のやれないことを全部やってあげるのはほんとうの援助ではないということです。それは、介護についても同様で、つまり介護をしながらも相手が自立ができるような支援をさせていただくという観点が必要なのです。

人間の生活能力は、ジグソーパズルにたとえると、若いころは完璧にそのパズルがそろっていますが、加齢とともにそのジグソーパズルのピースが少しずつ欠け落ちて、壊れていくのに似ています。

これまで介護というと、その欠け落ちた部分を、全部パテ埋めしてあげましょうということでしたが、今日の介護の現場では、「ストレングスモデル」(個人因子強化)と呼ばれる、その人ができないところではなくて、その人がもつストレングス(強さ・力)に着目して、いまできることに焦点をあてた介護の方法が主に取られるようになってきています。

そこで介護の現場においても、生きる喜びとか、亡くなる最後の日まで元気に楽しく生きることがどこまでできるかというような立ち位置に少しずつ変わってきています。

今後、事業者による介護サービスの拡充はますます図られていくと思います。しかし、それだけでこの介護時代を乗り切ることは難しいでしょう。家族・親族・医師・ケアマネジャーとのコミュニケーションを含めた介護支援が不可欠です。

以上のようなさまざまな事実があることを踏まえ、身近に迫り来る〝日本総介護時代〟を迎えるうえで、中高年男性の役割は重要になってきています。

そこで、妻や親など家族の介護に携わる、またはすでに携わっているお父さんたちに「介護」に取り組むうえでの陥りやすい点、留意しなければいけない点を読者のみなさんとともに考えていきたいと思います。併せて、私が訪問診療を通じて経験した介護現場のエピソードなども加えてご紹介していきたいと思います。

髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
たかせクリニック理事長
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
1956年、兵庫県生まれ。信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了、医学博士。麻酔科、小児科研修を経て、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。著書に『認知症の家族を支える』(集英社)『これで安心 はじめての認知症介護』(佼成出版社)など。
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