目からウロコの仕事力

結果は時間差で現れる ──「因縁果報」

中央学術研究所客員研究員 佐藤武男
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日々を大切に生きる

「私はこんなに実績を挙げているのにどうして昇進できないのか」などと言ってくる部下がいます。
人は自分のことになると過大評価しがちです。でも、会社は本人の実績だけではなく人間性などを上司はじめ、周りの目や人事部の目でじっくり観察しているのです。

たとえば、未知の世界にチャレンジする情熱、逆境での粘り強さ、打たれ強さ、企画実現力、反対派を説得し、部下を率いて結果を出すリーダーシップ、協調性などを評価しているのです。

結果を焦らず、目標や夢を見定めたら、いまやるべきことをしっかりやって、人が見ていなくても粘り強く、日々懸命に努力を重ねることが大事です。
原因はある機会や条件に巡りあって結果として表われるものです。
原因があって(因)、縁に触れて(縁)、結果が出て(果)、心に残る影響(報)という、仏教でいう「因縁果報」(いんねんかほう)となるのです。

私は銀行員時代、輸出入など貿易の営業や事務、企画に長く携わっていましたので、「貿易立国日本のために貢献したい」という夢をもっていました。
当時、貿易の決済は昔から信用状という紙ベースで行なわれていたため、航空便で送るとはいえ処理に時間がかかり、アジアから横浜港に輸入貨物が到着しているのに貿易書類のチェックが銀行間で完了できませんでした。
「貨物が引き取れずに何とかしてほしい」と切なる声、不満の声をもらす輸入業者の縁に触れ、貿易処理の電子化を実現しなければいけないという決意に変わりました。

その後、6年かけて世界の主要な銀行と連携して企画・開発し、貿易の電子化のモデルを完成させて実用化に至ることができました。
お客さまから「貨物を早く引き取れるので早く販売できるようになった」「コストが下がり、迅速化、利便化、事務負担の減少が図れた」など、多くの評価をいただきました。

夢をもち、それが縁に触れて決意に変わり、良き行ないを焦らず粘り強く実践することが、良き結果につながり、さらに意欲を燃やすという「因縁果報」を日々の仕事のなかで意識していきたいものです。

中央学術研究所客員研究員
佐藤武男(さとう たけお)
1954年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、三菱銀行に入行。香港や米国などの海外勤務を経て、三菱東京UFJ銀行外為事務部長を務める。また、貿易電子化諮問委員会の日本代表を6年間務めた。中央学術研究所客員研究員。現在はグローブシップ株式会社常務取締役管理本部長。
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