原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

勝つ人は一人もいない

アルボムッレ・スマナサーラ
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勝利者が勝ち取るものは敵意である。
敗れた人は苦しんで萎縮する。
心穏やかな人は、勝敗を捨てて安らかに過ごす。

「ダンマパダ」(201)

 

画像・AdobeStock

戦って勝つことが、幸福への道ではありません。戦いに挑んでも、勝つ人は一人もいないのです。負けた人は、負けてくやしい思いをします。勝った人は、負けた人に怨まれます。さらに敵がふえる結果になります。ですから、勝ってもいいことはないのです。「人生とは戦って勝つものだ」というような心で生きていたら、至るところで争いを起こし、よけいな苦しみを生むだけです。

日本の社会は、日常の暮らしを戦いの場にしています。幼稚園の入園試験なども、子どもたちに、もう生きるか死ぬかというような戦いをさせています。そのお母さんたちも、服やブランドで競争しています。ただでさえ、苦しむことがいっぱいあるのに、そんな余計なことまでして、苦しみを積み上げているのです。それは、あまりにも不幸な生き方です。わたしたちは「どうでもいいこと」にかこつけて、なんとかして相手をつぶそうとしたり、自分の強さや正しさを示そうとします。いくら平和であっても、「どこか喧嘩するところはないか、だれかやっつける相手はいないか」とさがそうとします。そして、「どうでもいいこと」を見つけては、競争し喧嘩を仕掛けようとしているのです。

なぜ、そのような争いを起こそうとするのでしょうか。

じつは、それが人間のありようだからです。わたしたちには、無限の過去があります。さまざまな生命として、生と死を繰り返してきたのです。人間である以前の、それこそ虫であったような過去から、わたしたちは自分を守るために、相手をつぶすということを繰り返してきました。そのため今もって、そういう争いの心をもちつづけているのでしょう。すべてのものは、完全ではありません。さがそうとすれば、不完全なところはいくらでもあります。だから、そういう欠点だらけの人間同士が、相手の欠点をさがし合っていてもキリがありません。

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