もしも愚か者が、
みずから愚かであることを知るならば、
すなわち賢者である。
愚か者でありながら、
しかもみずから賢者だと思う人こそ、
愚か者だといわれる。
「ダンマパダ」(63)
愚か者とは、どのような人をいうのでしょうか。「わたしは知っている」と思っている人が愚か者です。「わたしは知らない」という人は愚か者ではありません。「わたしは知っている」「わたしは正しい」と思っていたら、もはや成長はありません。「わたしは正しい」という思いにつつまれていたら、他人のことばには耳を貸しません。自己の振舞いを直そうとも思いません。
「わたしは知っている」という人には、教えてくれる人はあらわれません。「自分は仕事ができてすごいのだ」と思っている人には、協力する人があらわれません。そういう人は、いつかかならず失敗してしまいます。「わたしは知らない」「わたしは正しいわけではない」と思っているところに成長があるのです。
「自分は、どこかで間違いを犯すかもしれない」と思っていれば気をつけて生活できるでしょう。人に批判されたとしても「それもそうだ」と納得がいくものです。人になにか言われて腹が立つのは「自分が正しい」と思っているからです。「わたしは知らない」と思えば、「これはどうやるのでしょうか? 教えてください」と訊くことができます。すると、みんな親切に教えてくれます。自分は未熟だということに気がついていれば、人間関係は円滑になっていくものなのです。
自分は愚かだということに気がついている人は、日々学びます。その人は、けっして愚かではありません。
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