原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

心によい癖をつける

アルボムッレ・スマナサーラ
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悪事に生き甲斐を感じて、それを繰り返してはならない。
悪が積み重なるのは、苦しみである。

                   「ダンマパダ」(117)

善いことに生き甲斐を感じて、それを繰り返しなさい。
善いことが積み重なるのは、楽しみである。

                   「ダンマパダ」(118)

ほんとうに自由な心とは「どんなことがあっても波立たない、こだわらない心」です。しかし、人は長年にわたって形成されてきた心の癖のために、なかなか真の自由というものを得られないのです。

自由になる道は遠いものです。しかし、よいことを繰り返し行ない、心によい癖をつけていけば、かならずそこにたどり着きます。

水が一滴ずつしたたり落ちて、やがて瓶を満たすように、少しずつ、ゆっくりでもよいのです。道を歩いていて、落ちていた空き缶を拾ってゴミ箱に入れるとか、汚れていたらちょっと拭いてきれいにするとか、そんな小さなことからやればいいのです。それが習慣になって心によい癖がついていきます。

反対に「悪いこと」は、どんな些細なことでもやってはいけません。些細なことでも放置しておくと、やがて心に悪い癖がついてしまうからです。

心についた癖は、そう簡単には変えられません。いったん癖がつくと、またそのとおりに行動し、癖はさらに強化されていくのです。ですから、正しい癖をつけるようにしなければなりません。

犬に吠えられて怖くなった子どもは、どんな犬を見ても怖くなってしまいます。おいしい食べ物は、たびたび食べたくなります。小さいころ、本を読んで感動したら読書家になります。ちょっとしたことでも怒る癖がついたら、さまざまなところで人間関係の問題を起こして苦労することになります。いったん悪い癖がついたら、どんどんそれが強化されていくので、不幸になってしまいます。よい癖をつけた人びとは幸福になっていきます。

やさしいことばをかけることは、お金がかかるわけではないし、だれにでもできることでしょう。寝たきりの病人になっても、もはや余命がいくばくもないという人でも、できることです。看病してくれる人に、「ありがとう。世話になったね」とお礼を言うことはできるでしょう。

親孝行することもいいことです。両親にとっては感謝のことばほど嬉しいことはないのです。親にずっと迷惑をかけてきても、わが子から「今までごめんなさい」「お父さんのことは、大好きです」とひと言言われたら、こんなに嬉しいことはないのです。それまでの苦労は飛んでいってしまうのです。

しようと思えばできるよいことは、身のまわりにはたくさんあります。「今、忙しいからできない」「病気だからできない」などという人は、暇になっても病気が治ってもできません。

どんなときでも、よいことをしようと心がけていると、智慧が磨かれていくのです。

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