なすべきことを、なおざりにし、
なすべからざることをなす。
遊びたわむれ放逸な(今の瞬間に気づかない)者には、
煩悩が増大する。
「ダンマパダ」(292)
画像・AdobeStock
人生とは、瞬間瞬間の連続です。わたしたちは、瞬間瞬間を生きることしかできません。そして、今の瞬間になすべきことは具体的にあります。たとえば、話を聞くことであったり、皿を洗うことであったり、ものを片づけることであったりするわけです。
正しく生きるとは、今なすべきことをよく知り、それをきちんとやるということです。今、この瞬間になすべきことだけを、きちんとやればいいのです。では、そのあとはどうすればいいのかといえば、また、そのときそのときになすべきことを、ただやるだけでいいのです。つねに今なすべきことに、意識を向けてゆくのです。そうすれば、とてもシンプルな生き方になります。
ところが、わたしたちの生き方がなかなかシンプルにならないのは、過去を振り返り、先のことを心配したりして、「今、ここ」にいることが難しいからです。そのためには、ものごとを漠然と見ていてはいけません。具体的にやるべきことが見えないと、無用な不安が生じてくるからです。
シンプルに生きるためには、まず仕事や生活をきめ細かく「ユニットごとにカット」することです。今日一日の生活をいちばん短い単位にカットしてみていくと、今やるべきことが具体的にわかってきます。今、本を読むとしたら、本を読むことに徹するのです。そのときに、夕食はどうしようかとか、あの人に手紙を書かなくてはとか、余計なことを考えないのです。本を読むときには徹底的に本を読み、買い物に行ったら買い物に徹する。それが終わったら、料理に徹するという具合にすれば、巧みにものごとを処していけるようになります。
バックナンバー「 原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話」